佐藤は翌日もやってきました。もちろん、私がそれに応じることはありませんでした。チャイムが鳴り止むと、今度は玄関からドンドンという大きな音が聞こえました。どうやら佐藤は、防犯カメラで撮影されていることを知らず、玄関のドアを激しく叩いているようでした。『そんなことをすれば、夫を喜ばすだけなのに・・・』このように、土日を除いて、ほぼ毎日、やってくる佐藤の姿は防犯カメラを通してVTRに記録されていきました。そして、夫は毎晩、その様子を私を傍に居させながら、満足そうに観ていたのです。
そんなある日、夫はいつものようにVTRを観ながら、とんでもないことを言い出しました。「そろそろ、いい頃だな・・・おい、よく聞け・・・」「・・・なんですか?」「明日は、玄関のドアの鍵をかけるな・・・」「えっ?」「鍵をかけ忘れたように思わせるんだ・・・」「・・・」「当然、それに気づいたヤツは家の中に入ってくるだろう・・・最初、お前は台所で、洗い物でもして気づかぬふりをしているんだ・・・」「・・・」「大丈夫だ・・・俺はその様子をちゃんと見張っている・・・もし、アイツが話しかけてくるなりして、お前はアイツの姿を見たら、とにかく騒げ・・・そして、できるだけ時間をかせぐんだ・・・それからもし、襲ってきたら、大声をあげて抵抗しろ・・・あとは、俺に任せておけ・・・」私は、ようやく夫が考えていることがわかりました。『この人は鬼・・・佐藤に復讐することだけに憑かれている・・・怖い人・・・』私には、目の前にいる夫の顔がまさに鬼の形相に見えました。
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