「おはよう・・・」土曜日の朝、朝食をつくるためにキッチンに立っていた私の背後から、夫の優しい声がしました。結局、私は、ほぼ一睡もしないまま朝をむかえたのでした。「おはよう・・・よく寝ていたわね・・・」「ああ・・・昨日のことはほとんど覚えていないんだ・・・」「ところで・・・佐藤先輩はあれから、どうした?」夫の質問に、一瞬、支度をする私の手が止まりました。「えっ?・・・ああ・・・あの後、すぐにお帰りになったわよ・・・」私は瞬間的に嘘を口にしていました。「そうか・・・悪かったな・・・でも、お前、大丈夫だったか?」「えっ?・・・大丈夫って?」「いやあ・・・あの先輩は昔から、女癖が悪かったから・・・」「へえ・・・そうなんだ・・・」と言いながら、私は、そんな男とわかっていながら、私を残して寝入ってしまった夫を内心、恨みました。夫はその後も、佐藤との過去の出来事を何気なく語りました。(正直、私は聞きたくなかったのですが・・・)私は夫の話から、佐藤が最近、離婚したことを聞きました。その口ぶりからすると、どうやら夫は佐藤に対して嫌悪感を持ちつつ、心のどこかで怖れているようでした。結局、私は佐藤の言い残したとおり、真実を夫に告げる機会を逸してしまったのでした。
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