やがて常田が事務所を出ていくと、私は、若い男に一つ上の階へ連れていかれました。その階は、ワンフロアすべてが住居スペースになっていました。私は、男に言われるまま、広い浴室に案内され、入浴するように言われました。私は、まるで時間を稼ぐように、ゆっくりと入浴を済ませると、洗面所に置いてあったバスローブを羽織りました。というのも、浴室から出ると、そこには自分の衣服が全てなくなっていたからです。先ほどの男は洗面所の外で待っていました。「あのう・・・」私が自分の衣服の所在を聞こうとした瞬間、「こっちだ」と言いながら、男は奥の方へ歩き始めました。私は、ついていくしかありませんでした。やがて、私は広くて立派な部屋に通されました。その部屋の中央には天蓋付きの大きなダブルベッドがありました。まるで、それは豪華なラブホテルの一室のような雰囲気でした。『やっぱり、ここで、あの社長の慰み者になるんだわ・・・』そう思うと、急に今朝まで一緒にいた佐藤のことが思い出され、悲しさが込み上げてきて、涙が頬を濡らしました。『今頃、佐藤はどうなっているのだろうか?』佐藤の身が案じられました。と同時に、こんな立場では、もう二度と佐藤に会うことが叶わないと思うと悲しみが更に大きくなりました。『誰か助けて・・・』と私は心の中で叫び続けました。
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