「奥さん、ご主人の言った通りです。慰謝料のことは、全て私に一任されました。ところで今の奥さんに500万というお金はとても用意できませんよね。」常田は俯く私を覗き込みながら、言いました。常田は私にあえて返事を求めることなく、続けました。「そこでですが・・・私の知り合いの社長にあなたのお金のことを頼んだら、何とか私の顔をたてて工面してくれると言うんですよ・・・もし、奥さんが良かったら、その社長さんに一時的に立て替えてもらいませんか?・・・もちろん、その方は立派な社長さんですよ・・・私が保証します・・・どうですか?」今度は、私に同意を求めているようでした。この時の私は全てを失った絶望感から、もう抜け殻のようになっていました。私は半ば『もう、どうなってもいい・・・』と自暴自棄になっていました。「お願いします・・・」小さな声で、そう返事をしました。「そうですか・・・わかりました。悪いようにはしませんよ・・・何しろ私の依頼人の元奥さんですからね・・・それでは、奥さん・・・いや美穂さん、この借用書にサインと印鑑を下さい。」私は常田に差し出された500万円の借用書に内容をろくに確認せず、サインをして印を押しました。
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