岩下さんの口数が減りました。袋の中のDVDを見たからでしょう。黙って黙々とご飯を口に運んでいる姿が、逆に不自然でもあります。
僕も一緒で、彼女が見たことを知らないことを演じます。僕は、何も見ていないのです。
食事も終わり、テーブルから物が片付けられます。彼女はキッチンに向い、ゴミの片付け、そしてコップの洗い物を始めました。
それは、かなりの長時間行われています。二人でコンビニ弁当を食べただけです。洗い物と言えば、出したコップくらいのもの。
そんなに掛かるわけがありません。それでも、あのDVDを知ったことで、岩下さんがこちらに来られない気持ちも分り、僕はひたすら待つのでした。
ようやく、岩下さんが戻って来ました。テーブルに座り、普段は食べそうにないスナックお菓子にも手を延ばします。
そして、やたらと話を始め、僕を会話に誘い込もうとするのです。『僕のDVD観よ~?』、きっとその言葉が僕の口から出るのが恐いのでしょう。
しかし、その時は来ました。『僕の借りたDVDも観る~?2時間くらいあるから、観れるところまででいいよ。』と立ち上がり、DVDを手にします。
リモコン操作で開閉口を開け、DVDを乗せました。すぐに開閉口は閉まり、僕はそのまま部屋の照明を消すのです。
テレビの光が岩下さんの顔を照らしていて、少し困った顔そうな顔をしています。
何が困ったって、彼女はこれから再生されるDVDを知らないということを演じないといけないからです。
僕はテーブル座りました。しかし、明らかにさっきよりも彼女寄りに腰掛けたことに、彼女も少し反応を見せます。
映像が始まると、その内容が一気に紹介をされるのです。4人の熟女が次々と現れ、みんな『アァ~!アァ~!』と泣き叫んでいます。
すぐに『熟女!となりのおばさん全集①120分スペシャル』とタイトルも現れるのです。岩下さんは頑張って画面こそ観ていますが、気持ちはありません。
完全に僕に向けられています。
本編が始まりました。男性のあそこにはモザイクが掛けられていますが、『おばさん…、おばさん…、』と言いながらしている行為がなにかはすぐにわかります。
『アァ~!おばさん~!逝くぅ~!』と言ったそのペニスからは、白い液体が何度も飛び出しています。
しかしここで、まだ女優さんすら出ていないのに、『私、これ無理やわ。』と岩下さんが立ち上がります。頑張った彼女でしたが、もう限界のようです。
しかし、立ち上がろうとする彼女の手を掴むと、『ごめん、これ観れんわ。』と言っている彼女がバランスを崩します。
一瞬、『危ない!』と身体が反応をしていました。『女性を転ばせないように。』と身体が条件反射を始めたのです。
岩下さんの身体のバランスがどうなっているのかは分かりませんが、『とにかく元の位置へ、元の位置へ。』と反応をしようとする僕の身体。
彼女の身体を掴まえ、静止をさせようと必死です。しかし、そのバランスはそこになかったようです。向かってきたのは、倒れて来る彼女の背中でした。
僕は背中から彼女を受けとめ、大きく振れる頭を押さえました。そこでようやく止まったのです。
『ごめん。私、重いやろ~。』、謝ったのは彼女の方でした。僕が突然手を掴んだため、こうなったのです。
しかし、安心させようと『大丈夫。』と口では言っているのに、背中から彼女を抱く腕には力がどんどんと入って行くのです。
岩下さんの細い身体を胸に引き寄せ、完全に抱き締めてしまっていました。
彼女がその異変に気づいたのは、少ししてからのこと。『自分を守るために抱き締めてくれた。』と判断しているのでしょう。
しかし、その手がなかなか離れないことに気づき、『もう大丈夫。』とひと言入れました。しかし、それでも回された手は離れませんでした。
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