日曜日のお昼でした。おじいさんの軽自動車は、僕の数台前を走っていました。もちろん、助手席には迎えに行った岩下さんが乗せられています。
着かず離れずを繰り返し、見失うことなくその車の後を着けます。車は走り出して15分後、方向指示器を出してある建物へと消えました。
予想通り、そこはラブホテルでした。これで、男性と岩下さんの行動が分かりました。日曜日はラブホテル、水曜日の夜は彼女の家で会っているようです。
この2日間だけの関係を知り、僕は前向きでした。『残りの5日間はフリーじゃん。』と。
それからというもの、僕の行動は強気となります。『遠慮をしないグイグイとくるタイプ。』と彼女も思ったと思います。
しかし、それは岩下さんが『断れないタイプ』だと分かっているからこそのこと。でなきゃ、僕も出来ません。
その日、初めて彼女の玄関のチャイムを押しました。午後6時を回っています。扉が開き、僕の顔を見た岩下さんは『はい?』と出迎えます。
扉が開いたままの会話を始め、僕はここで初めて一歩前に足を進めます。後ろの扉が閉まり、初めてこの家に身体を入れ込んだ瞬間でした。
しかし、やはり岩下さんも女性でした。仲良くしてくれている年の離れた男の子とは言え、自分の範囲に入って来られたことは危険と判断をしているようです。
それは顔に現れています。『この部屋に入る男性は彼氏だけ。』、きっとそうなのだと思います。顔が正直に反応をしてしまっているのです。
僕は玄関に腰をおろし、その体勢で会話を続けます。岩下さんも狭い廊下に腰をおろし、その先にあるリビングを見せることも、通させることもしません。
普通の楽しい会話をしているのに、目に見えない心理線が繰り広げられているような、そんな感じです。それは一時間以上にも及ぶものでした。
『ちょっと上がってもいい?』、不意に出た僕の言葉に彼女は慌てます。玄関で居座られ、部屋に入れろという僕は、邪魔者以外何者でもないのです。
『少し、散らかってるから。今度にする?』と巧みに言われ、断られます。それでも、『同じ部屋やろ~?ちょっとだけ見せてよ~。』と頼んで引きません。
最後は『ちょっとだけ、ちょっとだけ、』と言って靴を脱ぎ、足を廊下に乗せました。岩下さんは立ちあがり、『ほんと汚れてるから~。』と言いますが、強気の男性には何も出来ないようです。
僕が廊下を歩き出すと、両手を出して制止をしようとしますが、僕に触れた瞬間その手は引きました。64歳の熟女と言っても、そんな女性なのです。
肩に手を掛け、岩下さんを押し込みながらリビングに向かいました。初めて触れた彼女の肩はとても細く、『ここまで出来るよ。』とばかりに強く握ります。
肩と言えども、男に身体を強く握られる女性の心理とはどんなものでしょう。僕も、それを楽しんでいました。
リビングに入りました。まず目にしたのは、岩下さんの使っている布団。たたまれてはいますが、その位置は予想通りに僕の部屋寄りにあります。
部屋の反対にはテレビと小さなテーブルが置かれ、彼女が普段過ごすスペースのようです。更に小さな水色のタンスも見えています。
僕はテーブルの隣に座りました。それを見た彼女はキッチンに戻り、冷蔵庫から飲み物を取り出して、僕に渡すのです。
『間取り同じだけど、全然違うねぇ。やっぱり、女性の部屋やねぇ。』と誉めますが、部屋を見渡す僕が気になるようで、いい加減な返事しか返って来ません。
間が持たないと思ったのか、岩下さんはテレビをつけ、そのテレビを一身に見つめています。それでも、神経は集中をし、僕の行動を見守っていました。
『この前の方が彼氏さん?』、ようやく突っ込んだ話を始めてみます。この部屋に入って30分くらいかたった頃で、少し彼女もほぐれて来ていましたから。
『ああ…。』とだけの彼女らしい返事をし、その顔は『その話題に触れるな。』と言う顔に変わります。
『何歳くらいの方?結構、年配の方?』と聞きますが、『そうね…。』と素っ気ないものです。
『いい人みたいですねぇ。で、どこで掴まえたの~?!』と無邪気に聞いても、『ハハハ…。』と真実は語りそうにはありません。
僕はそれ以上は聞きませんでした。この部屋が、とても居心地が良かったからです。岩下さんと、ついに二人っきりの空間。
後ろには、彼女がおじいさんにローターで責められていた布団。タンスの中も気になり、僕には今ここがエロ空間となっていたのです。
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