男性はとても優しく、常に彼女に対してレディファーストを心掛けてくれていました。とにかく、初めての彼女に一生懸命だったのです。
最初はロクに話も出来なかった男性ですが、彼女に慣れてくると普通に話の出来る方。少し、彼女に対して免疫が出来てきたようです。
そして、2ヶ月が過ぎました…。
『10時ちょうどに来てって言ったでしょ~。』、日曜日の朝に先生の声がします。彼女は、待ち合わせ時間の20分前にそこに行きました。
しかし、そこにはすでに黒のセドリックが停まっていたのです。彼は更にその15分も前から、彼女を待っていたのです。
いつも時間よりも早く来て待ってくれている彼に、先生も気を使って早く向かったのですが、それでも間に合わなかったようです。
『久美子さん、おはよ~!』、彼女の言葉など気にもせず、男性は朝の挨拶をします。『広樹さんねぇ~…。』と呆れますが、彼の無垢な顔を見ると怒る気も失せ、『おはよぉ~!』と明るく挨拶なのです。
とりあえず、キスまでは済ませた二人。後は、身体の相性なのですが、彼がなかなかその気にはならなかったのです。
『女性を知らないかもしれない…。』、先生にはそれは薄々気がついていました。もちろん、それを聞く訳にもいかず、ここまで来ていました。
ただ、『私がちゃんとリードしてあげれば…。』と、彼女はすでに考えてはいたのです。『これがダメなら、次は~。』、それは今の彼女と変わりません。
しかし、そのタイミングを彼がみすみす逃がしてしまっていることに、先生も焦りを感じ始めていたのは事実でした。
その日の午後2時。食事を済ませた二人は、彼女の指示を受けながら、車を走らせていました。
大きな町に入り、『どこかのお店を目指している?』と男性は思っています。そして、『そっちの方~。』と彼女の指示が飛び、車は右折をします。
そこは川に面した道で、抜け道っぼくもなっています。見えてきたのはラブホテル街で、気がついた男性ですが、気にしない素振りを彼女に見せるのです。
『入られます~?』、先生は覚悟を決めて男性に言ってみました。ここに来て、この言葉です。男性もそれが何を意味しているのかは分かります。
『どこにしますか~?』と男性が言ってくれたことで、彼女も安心します。彼女は『選ばせてもらっていいですか?』とホテルの看板に目を通していきます。
『ここがいいかもです。』と彼女が指をさします。先生が選んだのは、お城のような作りをしている『アム』というラブホテルでした。
男性は車を乗り入れますが、『ここがいいかもです。』と言った彼女の言葉に少し引っ掛かっていました。
『かも?『ここにしましょう。』じゃなく、かも?』、彼女がここに来たことがあるのではないかと思わせるような言葉に、少し疑問を持つのでした。
男性の疑問は、残念ながら当たっていました。この『アム』というホテルは、数年前に彼女が不倫相手と男性との情事に、頻繁に使われていた場所なのです。
男性が部屋を選び、男性が受付をします。慣れない対応ですが、それを彼女はなにも言わず、サポートに徹しています。
『やれば出来る人。』、この数ヶ月のお付き合いで彼女もそれが分かっていたのです。事実、本当に彼に甘えることも出来ていました。
根は真面目で、頼りがいのある方。一度経験してしまえば、あとはなんでも出来てしまう順応性。彼が天才肌なのを見抜いていたんですね。
『すいません。カッコ悪いんですが、わたし初めてなんです。』、部屋に入ってすぐに彼女は告げられました。
しかし、薄々気がついていた彼女にはダメージはありません。そして、『なら、私が初めての女性でいいんですか~?』と優しく彼に聞くのでした。
『よろしくお願いします!すいませんっ!』という男性の唇を奪いに行ったのは先生。それは過去に数回だけ行った彼とのキス、そのレベルのものでした。
彼のことを考えて、あえて軽いものに留めました。『一歩、また一歩、』、彼女は彼にそれを求めたのです。『天才肌』、努力だけでしやって来た先生には、羨ましい言葉です。
しかし、この男性はそれを持っています。『こんな男でもでいいかぁ~…。』、彼女はそう思い始めるのでした。
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