その日は、朝から強い雨が降っていました。朝のテレビにも、すでに『警報』の文字が映し出されています。
父は7時には会社に出掛け、その一時間後には僕も家を出ました。僕の仕事はともかく、父の会社は土木工事のため、工事現場は『作業中止』となるのです。
父が会社に出勤をすると、作業員さんみんなの目が輝いています。雨で作業が出来ないため、ウキウキモードなのです。
半分の作業員は、会社や倉庫の掃除。残りは材料の加工と明日の準備。どう考えても、『今日はお昼で解散。』と、そんな雰囲気が漂っています。
現場あがりの父にはそれが分かっているため、わざと会社を出ます。営業に出世をした自分が居ては、その雰囲気を壊してしまうと思ったからです。
会社を出た父でしたが、その日の予定は打合せが午前中に入っていただけで、午後からのスケジュール帳は真っ白でした。
『昼からは、適当に工事現場をまわろう。』と思っていたのですが、なにせこの雨です。どの現場も動いているはずがありません。
午前11時前。予定していた打合せがスムーズに進み、この時間にも関わらず、父は自宅に戻っていました。
先生はいつものように元の家で過ごしていて、不在。そこで父は、『おい、昼メシ作ってくれやぁ~。』と先生へ電話を掛けます。先生は、『帰って来てるの~?』と聞き、また我が家へ戻ってくるのです。
傘をさして歩いて来るなか、先生の脳裏には昨夜のことが思い出されていました。結婚して初めて、身体を求めてくる父を、拒否することが出来たのです。
これは彼女には大収穫でした。あの性欲の塊のような男を、最終的に諦めさせたのですから。『こうやれば拒否れる。』、そんなノウハウを持ったのです。
台所に立った先生は、野菜炒めを作りました。しかし、最近不仲になり始めているのも実感をしているだけに、会話はほとんどありません。
現場あがりの父の食事は、その日もとても速く、掻き込むようにしてお腹へと流し込みます。先生の食事がほとんどされないまま、父は食べ終えました。
父はソファーに横になり、くつろぎ始めます。その横で一人、先生は食事を進めていました。その彼女に『なあ?メシ済んだら、しよか~?』と言うのです。
先生は何も言わず、箸を進めました。それでも父は『なあ~?マンコしよやぁ~?』と言って来るのでした。
気にせぬ素振りを見せる彼女に、『お前、なんか不満があるんか~?』と父が問います。しかし、先生はまだ分かってはいませんでした。
冷静に話しをしているように見える父ですが、少しずつの苛立ち始めていたのです。
『お前、そんな女なんか?』
『なにがよぉ~?』
『ワシに犯らさんのか?』
『どうしたのぉ~?怒らんとってよぉ~。』
『お前、ワシの言うことが聞けんのかぁ~!?』
父が怒っていることに気づき、先生は打開策を考え始めます。怒っている父が恐いのではありません。
このあと、我を忘れてた父が何気なく出してしまう言葉の方が怖かったのです。それが出れば、今の自分達夫婦の関係を崩壊させ兼ねないと思ったからです。
しかし、父が口に出してしまった『お前の亭主は、アホやったんか?』の言葉に、先生の顔色が変わってしまいます。
更に『お前の死んだ亭主は、どんな教育してたんや?自分の女も教育出来んのかい~?!』と侮辱をします。
その言葉に、あの先生が細い手を使ってしまうのです。『今のもう一回言ってみなっ!なんて言ったんよぉ~!』と言って、父を叩き始めたのです。
彼女は父を叩きながらも、それが悔しくて悔しくて涙が出てしまいます。
しかし、『泣くな泣くな、オバハンがみっともないわ。可愛ないわぁ~。』と父に言われ、その気持ちも少しずつ失せていくのです。
『泣くな泣くな、63のオバハンが泣くな。オバハンは汚ないマンコ出して、マンコだけさせとけばええんや!』と続けられ、先生は父から離れました。
『つまらない男…。』、そう思いながら先生は呆れてしまうのです。愛した旦那さんを侮辱され、自分の身体まで侮辱をした男。
『久美子ぉ~、お前イヤらしいマンコしてるなぁ~。』『スケベなマン汁、吸ってやるわぁ~。』、そんな汚ない言葉でも彼女は嬉しかったのです。
63歳になったこんな身体でも、そう言って興奮してくれるこの男が好きでした。本心は愛してくれていると思っていました。
しかし、今の全否定を聞き、自分の愚かさを悔やみ、父には軽蔑をするのです。
先生は、『もう、わかったわぁ~。はいはい、オバハンですぅ~。汚ない汚れたオバハンですぅ~…。もう、いいわぁ~!!』と父に告げます。
言葉は自分で選んだはずなのに、それを吐いた自分に涙が溢れました。悔しくて堪らないのです。
しかし、そんな先生に、『泣くな泣くな、アホ亭主と汚ないマンコで、毎晩マンコするから、あんなアホな子供が出来るんじゃ~!』とトドメ言葉が飛びます。
その言葉に、一旦収まり掛けた彼女の怒りは、再び爆発してしまうのです。『もう一回言えぇ~!もう一回言ってみぃ~!』と言って父に突っ掛かります。
『もう一回言えぇ~!言えぇ~!!』と、泣きながら父を叩くのです。
しかし、細い先生の力では、怒った父の心には何も響きません。再び近づいて来た彼女を、叩く腕ごと抱き締めてしまいます。
身体の自由を奪われた先生は、父を睨み付け『ゆるさんからぁ~!あんた、絶対にゆるさんからぁ~!』と叫びました。
それを、『おぉ~、可愛いのぉ~。そうかぁ~、お前はマンコしたいんかぁ~。』と蹴散らしたのです。
先生の顔は必死になり、『やらん~!絶対にやらん~!あんたみたいなのと、絶対にやるかぁ~!』と告げるのでした。
父は、先生の顔に唇を寄せます。身体の自由が聞かない彼女は、頭を下にさげました。それでも、父の唇は彼女の髪に落とされるのです。
そして、父は『美代~?美代になるかぁ~?そうかぁ~、お前は美代になりたいんかぁ~。』と口にし始めるのでした。
『美代。』、死んだ僕の母の名です…。
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