父と先生が、となりの寝室へと消えました。すぐに僕の部屋のテレビは消され、照明も落とされます。そして、父の寝室へと目は向けられます。
母がいた4年前の僕とは違います。それに、父の部屋に消えた女性を、僕は先ほど『母ちゃん。』と呼びました。
その方も、僕を自分の息子として、なんとか付き合おうとしてくれてもいます。しかし、そんなことは無理なのです。
彼女は母ではなく、中学生時代にお世話になった英語塾の先生、滝本先生なのです。残念ながら、久しぶりにこの家に現れた『女』なのです。
僕は息を飲みながら、父の部屋の壁とにらめっこをしていました。深夜11時半を回り、車の往来も消えましした。
その時でした。父の部屋から、『ガタッ、』という物音が聞こえたのは。父と先生が寝室に入って、約一時間後のことです。
寝ているのであれば、もっと軽い物音だったはずです。それが大きかったため、なにか勢いをつけて動いたとしか考えられないのです。
そして、聞こえて来たのは、『ゴメン…、ゴメン…、』と言う女性の声。部屋の中には父と先生しかいないため、その声の主は滝本先生以外には考えられません。
更に、『ゴメン…、ほんと、ほんとゆるして~。』という、先生が父を落ち着かせようとする声が聞こえてきます。
ベッドは、ガタガタと音を立てていました。二人がベッドで探り合いをしているように思えます。興奮した父が、先生に迫っているようです。
先生の声が消えました。ガタガタと音を立てていたベッドも静かになり、一瞬の静寂が訪れます。しかし、その静寂など、僅か5分程度で破られるのです。
『アァ~…、』という、滝本先生の声によって。
『ハァ~…、ハァ~…、』という、女性の息づかいが聞こえていました。そして、『ウゥ~…!』という、先生の声がして来ます。
僕は知りませんでした。うちの部屋の壁って、こんなに声が聞こえるほど薄かったことを。父と母は、そうとう苦労をして営みを行っていたのでしょう。
もしくは、僕が子供だったので、その辺りに鈍感だったのかも知れません。
『ゆるして~…、ゆるして~…、』と先生の声が聞こえて来ます。その声も静かになり、また静寂が訪れます。
たまに聞こえる、『ウッ…、』という女性の声で、まだ二人の営みが終わっていないことが分かります。
そして、『もぉ~…。』と女性が言った時、父の部屋のベッドが『ギシギシッ』と音を立て始めるのです。
声を出すことを我慢しているのか、先生の声はまったく聞こえては来ません。しかし、更に『ギシギシッ!』と音をたて始めると、女性の声がして来ます。
『アァ~!…、ゆるしてぇ~!…、もう、ゆるしてぇ~!』と聞え、それは滝本先生その人の声でした。
そして、ベッドは更に音を立てたかと思うと、それは一瞬で、すぐにその音は消えました。もう子供じゃないから、分かります。
僕の滝本先生は、父に犯られたのです。
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