何の保証もないままになかなか会えないと言うのは、我慢が必要だった。志乃との関係の中で、我慢をする為の「拠り所」を見つけられなかった。転勤の前までなら志乃と過ごす為だった時間は、ほとんど空白となった。その空白を埋めるように「普通」の彼女が出来、俺も結婚した。
俺は、結婚を志乃に告げられずにいた。
俺の結婚前に3年以上続いた秘密の関係。志乃は既に結婚していたから、覚悟していたかもしれないが、俺はすっぱり断ち切る事が出来なかった。厳然と存在する400kmと言う距離の壁。ちょっと隠れて会う、なんて事も出来ない。現実には、もう会う術が無かった。
出張にかこつけて、志乃に連絡を取った。「大切な話がある」とだけ伝えた。この一言で志乃もおおよそ察したはずだったが、出張先まで来てくれた。出張は会社が手配した1泊だったが、志乃とは、別の宿でもう一泊した。志乃にちゃんと俺の結婚を告げた。
「おめでとう。良かったね。」
と言ってくれたが、志乃の表情は寂しさがありありだった。志乃が
「こんな事してていいの?」
と口にした。
「志乃も・・今ここにいるよ。」
俺が返すと、志乃も黙ってしまった。
チェックアウトまで、一晩中抱き合い、志乃の中に放出し、志乃は何度もイッた。
翌日、志乃を駅まで送った。それっきりになった。
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