私は公立の高校に入学すると再び三浦里奈さんと同じ学校に通うことになった。
悪友は別の私学の高校に入ったが、行先も教えず別の街に引っ越して連絡がとれなくなっていた。
私は三浦里奈さんが美術部に入っていることを知って、それまでほとんど興味を持たなかった
美術部に入部した。中学生の彼女は美少女だったが、高校生になると大人の女の雰囲気が
芽生えて、さらに美しさに磨きがかかっていた。胸の膨らみも半端じゃなかたから、
男子生徒の視線の的だったし、さらに不快なことに男性教員からも露骨な興味を持たれていた。
私はあの夜盗み見た、里奈さんと父親の入浴姿を高2の里奈さんに重ね合わせることが難しく
なっていた。あれは幻覚か何かだったのじゃないか、それほど里奈さんは無垢で不可侵な
美しさが備わっていた。放課後になると美術部員は自分のペースで美術室にきて絵を画いていた。
私が入部した頃、里奈さんは海を背景に椅子に座る少女の油絵を画いていた。
何か不安げだが強い意志をもっていそうな少女が、冬の海なのか暗い色合いの曇り空の
海を見つめている絵だった。雲の一部が裂けて太陽の日差しがそこだけ海を照らして波を
光らせていた。何かきっかけをつかみたくて私は勇気を出してその絵について彼女に聞いた。
「それは冬の海ですか?」
「わたしにもよくわからないの。」
里奈さんは明るく笑いながら答えたのだった。
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