旦那が納屋を出てビニールハウスが並ぶ畑へと歩いていくので、和也もその後をついていく。
『さて、今日は誰かおるかいの』
『え?誰かって?』
『こうも広すぎっと、うちの者だけじゃ手が回らんからの。村の若いのに畑ば貸しとるんだわ。おーい、誰かおるかぁ?』
旦那はハウスのドアを開け、誰ともなしに呼びかける。
ハウスの中から、ジメッとした熱気と湿気が吹き出してくる。
その奥に動く人影が見えた。
目を凝らすとくすんだ作業着を着た男女が慌てて身なりを整えている。
ズボンをあげ終えた若い農夫が汗だくになりながらも青ざめた様子でこちらに駆け寄って来た。
『だ、だ、旦那さん、、急になんです?』
『急ってオメェ、ここはわしの土地じゃて、いつ来たってよかんべよ。ほんで、今何しとったんじゃ?』
『な、何って、畑仕事ばしとったですよ』
『嘘はいかんのぉ。また嫁さんとまぐわっとったんじゃろ。ほれ、ズボンのチャックが開いとるで』
『あっ、いやっ、これはその、、あの、、』
『嫁さんと仲ええのはかまわんが、人んちの畑でそげなことすんのはやめろ言うたじゃろが』
『す、すんません、、暑ぃ中カミさんのケツば見てたらムラムラ堪らんくなってもうて、、』
若い農夫が言い訳にならない言い訳をした。旦那は彼の耳を掴み顔を近づけて何かを小声で話をしている。話が済むと彼は一礼して駆け足でハウスの中で頭を下げ続けている妻の元へと戻っていった。
『旦那さん、さっきあの人に何を話たんですか?』
『なぁに、今晩の酒盛りには必ず嫁さんば連れて来い言うたのじゃ』
旦那はまたもや口元をニヤつかせていた。
つづく
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