時刻は午後1時を回っていた。
一回戦目を終えた美和子さんは、少し眠りについています。『オマンコ壊れる~!おばちゃんのオマンコ~!』と叫んでいたのが嘘のように静かです。
不意にスマホを見ました、赤いランプが点滅をしています。見ると、会社から電話が鳴っていて、マナーモードにしていたために気がつきませんでした。
会社に掛け直すと『今、どちらの方ですか?』と事務員さんに聞かれ、『会社の近くまで帰って来てますけど…。』とウソをつきます。
そして、『もう台風が来るので、早仕舞いをしようと言うことになりました。一回、帰って来れますか?』と言われ、会社に帰ることになるのです。
急いで美和子さんを起こし、事情を説明します。『そうなのー?』と寝起きの彼女に言われましたが、僕たちはこのホテルを後にするのです。
駐車場に出ると、確かに雨と風が強くなっていて、台風の接近を思わせます。平日のお昼間、それも台風接近と言うこともあり、お客は僕たちしかいません。
先程まで停まっていた赤い軽自動車と社用車、お客の2台の車も帰ってしまったようです。
僕は美和子さんと分れ、一路会社を目指します。うまく行けば、2時過ぎには会社を出て、3時前にはまた彼女の家に行くことが出来る。
そんな計画まで立ててしまうのでした。
しかし、この時すでに事件は起こっていました。ラブホテルに停まっていた、赤い軽自動車と一般の社用車。
この社用車こそ、美和子さんの息子、僕の友達のマッチィが乗り付けていたものだったのです。
。市の名前をテープで隠し、ナンバーも立て札によって隠されていたのでした。
結婚2年目の彼が、デリヘルという遊びにハマり始め、勤務中にも関わらずこのホテルで楽しんでいたのです。
僕も美和子さんも、その車になど気にすることもなく、横を通ってホテルに入って行ってしまいました。うかつでした。
マッチィという彼。もちろん10年前の記憶となるが、決して好かれるタイプではない。背は小さいが、どこか可愛いげがないのだ。
ただ、お互いに子供だったので、あまりそう言った性格など気にすることもなく、近くにいるから遊んでいた、そんな感覚だった。
彼の部屋に、ドラゴンボールが全巻あったのが思い出で、よく読ましてもらっていた記憶がある。
あれから10年が経ちました。『あの子、嫌いやわー。』と母がマッチィのことを言っています。それは母だけでなく、近所でも評判になるぼどだった。
子供の頃の可愛いげの無さは、成人した今でも変わってないと見える。20歳で結婚をし、まだ子供はいないが、ここに来てデリヘル遊び。
少なくとも、まっとうな公務員ではないようである。
会社に帰ると、電話で事務員の言った通りに、事務所内は緩んだ雰囲気となっていた。『お先ですー!』と帰る方もいて、早仕舞いは決定をしたようだ。
僕も上司の机に向かうと、『急ぎの仕事がないなら、もう帰っていいぞ。台風来るぞ!』と言われます。
帰社したばかりの僕は、僅か数分の滞在で今度は帰りの車に乗るのでした。
車を走らせ、これから美和子さんに会いに行くために、『連絡を取ろうか。』と考えていた時でした。
僕のスマホが鳴ります。画面には『マッチィ』と表示をされていました。『なんだろう?』と思いながら、電話に出るのです。
『カンちゃん?俺、俺。』と始まりました。『風、すごいねぇー?』と聞かれ、会話慣れしているのか、すぐに本題には入りません。
しかし、ある時。『ところで、カンちゃん、車はなに乗ってたっけ?』と言って来ます。訳の分からない僕は、まさかこれが本題などと知るよしもありません。
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