『この行動力はどこから生まれてくるものなのか?』、自分でも分からないほどに、マッチィのお母さんに会おうとしている自分がいました。
『うっすら気づかれている。』『少し迷惑がられている。』、それも分かった上での行動でした。息子の友達だけに、足げにすることも出来ないおばさん。
それも全部分かっていても、どこか彼女に対して一生懸命になってしまっていたのです。
そんな頃、『ありがとねぇ。もう充分です。何かあったら、連絡します。』とマッチィから、そう告げられます。
彼の企画も、そろそろまとまったようです。僕の協力は、もう必要がないということです。おかげで、楽しかった訪問もその理由がなくなったのです。
本屋にもそう頻繁に行ける訳もなく、おばさんとの淡いものは終わろうとしていました。
ところが、『これ、何かわかる?あんた、なにかやった?』と家へ帰るなり、母に言われます。おばさんからの御礼のお菓子が届けられたのです。
『あの子、嫌いやわー。相手にしない方がいいよ。』と母に初めて言われ、やはりマッチィは近所でも評判は悪いようです。
しかし、おかげでおばさんの家に向かう理由が出来ました。御礼の御礼を言いに行くことが出来るのです。
『そんなことしなくていいのにー。』、おばさんとぼくは、お互いでそれを言っていました。それでも帰るつもりはなく、家の中へ招いてもらいます。
僕はおばさんといると楽しいです。おばさんも、言いはしませんが、きっと同じだと僕は思っています。
だから、何日も一緒に居られるのです。僕はそう信じています。
いきなり、『また、お店に買いに来てよー。』と言われました。これはうれしい言葉で、また口実が出来ます。
更に話は盛り上がり、出されたジュースにお菓子が次々と減ります。おかげで少しお腹も痛くなり、『ちょっと、トイレ貸して。』とお願いをするハメに。
トイレの扉を開くと、そこはとても小さく、昔ながらの汲み取りのトイレです。そこに座り、用を足すことになります。
身動きが出来ないくらいに、小さなトイレです。トイレに座り、意味もなく上を見上げます。そこに、小さな棚を発見します。
替えのトイレットペーパーが置いてあり、そのとなりには女性用の生理用ナプキンが一緒に置いてあります。
使っているのはおばさんとしか考えられず、母よりは年下なのは分かりますが、おばさんは何歳なのでしょうか。
用を済ませ、居間に戻りました。長居も出来る訳もなく、おばさんとの間で『そろそろ。』といった感じの雰囲気も漂い始めた頃。
『そうだ!ちょっと、いいものあげるわ。』と言って、奥の部屋に消えたおばさん。現れると、紙袋と雑誌を手に持っています。
『こんなの読む?』と言って見せられたのは、アダルト雑誌。所謂、エロ本ってヤツです。7冊ほどあります。
『どうしたの?』と聞くと、『うちにあったから。』と言われ、思わず『息子の~?』と聞いてみます。
おばさんは返事をためらいました。ここで、『息子のもの。』と答えれば、きっとアレに使われたものと僕は想像してしまう。
『違うよ。』と答えれば、『じゃあ、誰のもの?』という話しになってしまう。おばさんにとっては、どっちを選んでも苦しい状況。
彼女が選んだのは、『私が買ったのよ。おばさんだって、こんなの見る時あるんよー。』と、ユーモアたっぷりに返すしかありませんでした。
大人の女性が、苦し紛れの言葉を吐きました。それが僕には新鮮でした。困って困って、自分の性癖を晒すようなことを言ったのです。
そうそう見られる光景ではありません。そう言ったおばさんも、どこか『失敗したぁー。』という表情になっています。
ここで、助け舟を出します。『ちょっと、見せて見せて!』とその雑誌を手に取り、興味深そうに広げます。『おばさんも見て見て。』って感じです。
『僕は、こんな本見慣れてるから。大好きだからー。』といいアピールをすることで、彼女を楽にさせてあげたかったのです。
かなりの内容の本がありました。外人の男女が絡み合い、結合部はなにかで傷をつけたように荒く隠されています。
それでも陰毛はハッキリと写され、男も女もその性器がほんの少しだけ写っているのです。なかなか過激な本です。
僕はおばさんにも見せるように大きく広げ、興味深そうに見ていることをアピールします。困ったのは、おばさんの方でした。
こんな本を持ってきたのは自分。買ったのも自分。僕に差し出したのも自分。僕が広げて見ているだけに、目を背けることも出来ないのです。
おばさんはいよいよ覗き込み始めます。お互いに、『自分はこんなのではない。』と思ってはいますが、今はこうするしかないのです。
『これ見てん。ここ、見えてるよー。』、普段は絶対こんなことを言わない僕も、この場の礼儀とばかりにそう口にします。
『ほんとやねぇー。』とおばさんも言いますが、それ以上は口にはしません。彼女も照れくさいのです。
なんとかそんな会話を続けた僕とおばさんでしたが、やはりこんな雰囲気には馴染めず、思ったほどの盛り上がりは見せません。
『さあ~!後は、帰って一人で読んで!』とおばさんが声を張り、『そうするわ。』と僕も立ち上がります。
エロ本を紙袋に収め、玄関に向かいます。靴を履きながら、『さあ!帰ってエロ本見よー!』と言ってあげます。
さっきまで二人で読んでいたので、その流れでユーモアに言ってあげました。おばさんも負けじと、『無理しないように。』と笑って返してくれます。
『なにがぁ~?』と聞き返すと、『知らん知らん!おばちゃん、何にも知らん!』と笑っていました。
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