殺風景な畳敷きの6畳間。
部屋の隅に小さなテレビと布団が畳んで置いてある。
部屋を見渡した和也の目に、場違いな光景が飛び込んできた。
窓際のカーテンレールに白いフリル付きのベビードールと、赤・白・黒の透け感のある総レースの小さなランジェリーがいくつもピンチハンガーに吊されて部屋干しされたままになっている。
美咲もそれに気付き慌てて取り込んだ。
「やだ、私ったら、、片付けるの忘ちゃった、、ごめんなさい、変なもの見せちゃって、、」
『い、いえ、、な、何も見てませんから、、』
「あ、あの、すぐに夕飯の支度をしますから、、荷物を置いたら下に降りてきてください、、」
美咲は気まずさからか和也と目も合わせずに、足早に1階へと降りていった。
(美咲さん、普段からあんないやらしい下着を、、もしかして今日も、、)
和也はますます美咲の服の下が見てみたくなった。しかしそんなことは叶うわけもないと、悶々とするスケベ心をなんとか振り払った。
和也は荷物を置くと部屋の窓を開け外の景色を見た。そこからは昼間居た海辺や遠くの沖合いまで一望できる。目線を移すと遠くに灯台の灯りも見えた。
すっかり暗くなった港町に波の音だけが絶え間なく聞こえてくる。
和也が1階に降りると、美咲がテキパキと夕飯の支度をしていた。うなじに汗を滲ませて働く彼女はとてもしおらしく艶やかだった。
「お昼と同じような料理でごめんなさいね、こんなものしか冷蔵庫になくって」
『こんなものって、すごく豪華じゃないですか!』
テーブルには刺身の盛り合わせに大きな肉厚のアワビまで並べられていた。和也はそれを見てついスケベなモノを連想してしまった。
『す、すごいアワビ、、』
「今日獲れたものなんですけど、内緒で貰ってきちゃった 笑」
『大丈夫ですか? もしバレたらあのお婆さん達に叱られちゃうんじゃ、、』
「大丈夫、みんなこっそりやってるから、、さぁ召し上がってください」
『はい、それじゃあ遠慮なく、いただきます』
漁具の手入れという慣れない作業でかなり腹が減っていた和也は、出された料理をガッついて食べた。彼が食べる様子を美咲はただ微笑んで見ていた。
『あれ? 美咲さんは食べないんですか?』
「あっ、うん、私、夜はいつも食べないんです、ダイエット中なの」
『そんな、ダイエットなんて全然必要ないじゃないですか。美咲さんスタイルもすごくいいし』
「そうですか? 嬉しいな、、そうだ、ビールでもお飲みになりますか?」
『あっ、嬉しいです。美咲さんも一緒に乾杯しましょうよ』
「それじゃあ、、一杯だけ」
まるで夫婦の食卓のような雰囲気のなか、2人は缶ビールで乾杯した。
つづく
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