二 告白
先週のヒーリングタイムのこと。
亜希子は僕以外の男性とのセックスを想像しながら登り詰めたと確信している。だって、亜希子の膣の締まり方は今まで経験したことがないくらい強かったから。
いよいよチャンスがやってきたのだ。今日こそは僕の思いを伝えなければ。
亜希子のすらりと伸びた長い脚を両手に抱いて、くるぶし、ふくらはぎ、ひざ、太ももの順に舌を這わせて愛撫をつづけながら、僕は話を切り出した。
「ねえ、亜希子」
「なによ。もうあの話はおしまい。浮気なんてしてないからね。しつこいと怒るわよ」亜希子は悪戯っぽくそう言うと、爪先で僕の股間を軽く蹴り上げた。
「痛て! 大事なところが潰れるじゃないか」
「何よ、大袈裟ね」
「ところで、亜希子、“カンダウリズム”って言葉聞いたことないかい」
「神田? 売り? 何? 聞いたことないわ」
「元々の語源は、古代リディアの王様カンダウレスから来てるんだけどね。カンダウレスは自分の美貌の妻が自慢で、部下たちにこっそり妻の裸を拝ませ、部下が勃起するところを眺めるのが大好きだったらしい」
「へえ、ずいぶん変態な王様がいたものねえ」
よかった。ここまでは亜希子も嫌がらずに話に付き合ってくれている。よし、ここからが本番。僕は一気にまくしたてた。
「そこから転じて、今は、愛する自分の妻を他人に抱かせることに性的歓びを感じることを“カンダウリズム”と呼ぶようになったんだ。まあ、一種のフェティシズムだね。言葉ができて初めて物事の本質が理解できるってことあるだろう? 例えば、不条理な性的嫌がらせを受けて苦しんでいる女の子がいても声に出せず誰にも相談できなかったのに、セクシャル・ハラスメントという言葉が現れて、やっと、私が受けていたのはセクハラだったんだと認識できて、被害から救われるという……」
「ああ、それなら職場のハラスメント研修で聞いたことあるよ」
「そうかい、でもここからが本題なんだ。 ぼくも“カンダウリズム”って言葉に出会って、やっと自分の中でもやもやしていたものの正体を知ることができたんだ。亜希子に何をして欲しいか、はっきりと解るようになったんだ。」
「
私にして欲しいことって、いったい何なの?」
一瞬、言葉に詰まったけれど、大きく息を吸い込んで自分を落ち着かせながら続けた。
「いいかい、よく聞いてくれ。亜希子、きみを他人に抱かせてみたくて堪らないんだ」
(続く)
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