それから半月が過ぎ、美奈子は日常を取り戻していた。あの日の事は出来心からの淫らな思い出として美奈子の心の中に封印した...
はずだった。
その日の夕方、1通の郵便物が美奈子宛に届いた。重さはなく薄い茶封筒に包まれていた。
恐る恐る包みを開封すると、中にはいやらしいパッケージのDVDが1枚入っていた。
《人妻輪姦乱行サークル ~Gカップ素人妻、M子~》
そのタイトルに美奈子はハッとした。
パッケージに映る女性をよく見てみると、目線は入っているものの美奈子本人の卑猥な姿だった。
「えっ..なに..どういうこと?」
DVDの他に2枚の紙が同封されていた。
1枚はサークル管理人の西園寺からの手紙で、便箋にはこう書かれていた。
『先日は当サークルをご利用頂きまして、誠にありがとうございました。その節はお楽しみ頂けましたでしょうか? 同封の誓約書に記載の通り、サークルご利用の引き換えと致しまして、行為の様子を映像化したうえ販売をさせて頂きます。恐縮ではございますが、ご出演された作品の出来栄えをご確認頂きたく、サンプル版を同梱致しました。ご査収の程よろしくお願い致します』
もう1枚の紙には誓約書と書かれており、
・映像化を承諾すること
・異議を申し立てないこと
・一切の権利を放棄すること
が箇条書きにされ、最後に美奈子の拇印がしっかりと押されていた。
美奈子はその場に崩れ落ちた。
ふとした出来心の末の過ちがこんなことになってしまうなんて、まったく予想だにしなかった。
玄関のドアが開き夫が帰宅してきた。
「あ、あなた、おかえりなさい」
美奈子は咄嗟にそのDVDを戸棚に隠、平静を装った。
『今日、アレ届いただろ?』
夫は開口一番に聞いてきた。
夫はすでにそのことを知っていた。
正確には、知らないわけがなかった。
『驚いたか? 仕組んだのは俺だ。そろそろ届く頃だと思ってな』
夫はあのサークルに美奈子をAV女優に仕立てるよう依頼したのだと言う。
『お前の美貌を俺のものだけにしておくのはもったいないからな。それに俺のはもう使い物にならん。だったら、もっと他の男の役にたってもらいたいと思ってな。金だってがっぽり入るぞ』
美奈子は夫の言っている意味が理解できなかった。不思議と怒りや不信といった感情は湧いてこず、自分が売られたという現実を受け止めることができなかった。
それから数ヶ月後、美奈子は成人向け雑誌のヌードグラビアを飾っていた。AV女優ランキングでは常に上位を維持し、アダルトビデオショップの店頭には美奈子の出演作が何本も並んでいる。
望まないデビューからわずか数ヶ月で美奈子はトップAV女優にまでのぼりつめた。
会ってヤレるAV女優として、美奈子は今でもあのサークルに通っている。
おわり
最後までお読み頂きありがとうございました。
※登場人物、固有名詞、場所などはすべてフィクションです。
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