(おまけ)
その日の夜9時を過ぎて、早紀は今日起こった出来事の幸せな余韻に浸りながら、居間で寛いでいると、
(ピンポーン)
と、インターホンが部屋に鳴り響いた。
みけぬこ運輸です。
藤谷さん、遅くにすみません。
荷物の受け取り伝票の件でお願いが、、
という市尾君の声。
あら、市尾君。
今ごろ何かしら?
早紀は、昼間のことをまた思い出して顔を赤らめながら玄関扉を開けると、そこには、市尾君が申し訳なさそうに立っていた。
早紀さん、うちの主任がこの受け取りのサインじゃダメだって言うんっす。
と言って、
市尾君はおずおずと、例のピンク色の朱肉の、早紀の「乳首印」と「菊の印」が押された伝票を早紀に差し出した。
あら、いやだぁ、恥ずかしいっ!
そう、あたし、これで大丈夫なのかなって思ったのよ。
もぅ!早紀姉さん、市尾君のこと心配になっちゃうわぁ。
と言って、
早紀は、しなやかな手で市尾君の頬を優しく撫でてから、市尾君の両肩に両手をのせて、つま先立ちでグッと背伸びをすると、市尾君にチュッ、と口づけをする。
目を丸くして早紀を見つめる市尾君の作業着の胸ポケットから、ちょっと借りるわね、と言って、早紀は赤ボールペンを抜き取り、その例の伝票を玄関横の壁に押し当てながら、さらさらと加筆した。
はい。じゃあ、、これでいいわね。
と言って、市尾君に手渡す。
すみませんっす。
市尾君が申し訳なさそうにそれを受け取り伝票をみると、
「乳首印」と「菊の印」の上に、はっきりと「早紀」の文字が書かれてあった。
市尾君は早紀の顔を見る。
当然のことに、早紀は市尾君の驚く顔を見ると、ニッと笑った。
(おしまい)
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