お正月も明け、長かった大型連休も終わり、僕は通常の仕事に戻ります。普段なら新年会などやらない会社だが、今年はイベントが用意されました。
幹事は僕。そこで、もちろんボウリング大会を行うのです。たいした準備もせず、手軽に行えるため、幹事する方も楽なのです。
僕にとっては、あの『悪夢のボウリング大会』から、9ヶ月ぶりの雪辱戦となります。練習もして来ましたし、もう去年のようなことはありません。
3ボックス計6レーンを貸し切っての雪辱戦が始まります。僕には遠目で見えていました。離れたレーンで、あゆみさんが一人ボウリングをしている姿です。
1ゲーム目。去年、『246点』というトンでもない得点を叩き出した先輩が、今年も飛び出します。一人200点台を叩き出し、前半トップに立ちます。
僕は170点台で4位。去年はダントツの最下位でしたから、大躍進と言えますが、練習を重ねてきた割りには案外な得点で終わります。
2ゲーム目とのインターバルの時間。みんなにドリンクが配られ、それぞれが1ゲーム目での出来事などを語っていました。
もちろん、この時間を利用して、トイレに走る方もいます。僕もその方向に向かうのですが、あるボックスで足を止めました。あゆみさんです。
『どう?』と声を掛けられました。彼女も、僕の雪辱戦なのを知っています。『4位くらい。』と言うと、『勝てそう?』と聞かれました。
その言葉には、変な気持ちが芽生えました。『勝つ?』、長くボウリングの練習をしてはいましたが、人に勝つなんて考えたこともなかったのです。
あゆみさんとしかやってなかったので、闘争心に薄い僕は、『自分に今、優勝のチャンスが来ている。』ということを初めて知るのでした。
去り際に、『優勝したら、チューしてな。』とボソッと彼女に告げました。
2ゲーム目が始まりました。僕は、スペアーでのスタートとなります。2つ隣の先輩は、オープンフレームでのスタートでした。
僕はストライク、スペアーとマークを続け、先輩に迫ります。『チャンスかも!』と先輩との得点差ばかりを気にしていました。
しかし、伏兵は意外なところにいたのです。その向こうのレーンで『うぉー!すごー!』と歓声があがっています。
見ると画面には『おめでとう!6th!』と掛かれ、ストライクを6連発をしているヤツがいたのです。そのボックスで一躍ヒーローになっていました。
ストライクは出るけど、それが続かない僕は焦りを感じていました。諦め心も出てきます。
その時でした。後ろを見ると、遠くから僕たちを見ている女性が立っています。あゆみさんでした。きっと、僕のスコアーを見ているのです。
『彼女に、いいとこを見せたい!』、男ならみんなそう思うはずです。僕もそうでした。優勝に向けて、ピンを弾き飛ばします。
表彰式。幹事である僕が順位の発表をします。いきなり優勝者の発表です。優勝は、前半200点を叩き出した先輩がそのまま逃げ切りました。
準優勝は、ストライク6連発をした彼でした。その後も僕の名前は発表されず、結果は7位。平凡に終わったのです。
『あゆみさんにいいところを見せよう!』と張り切りましたが、それが空回りをしてしまい、後半スコアーを崩してしまいました。
表彰式も終わり、参加された皆さんは早々に帰っていきます。このあと、自宅に帰られる方、夜の町に消える方、いろいろだと思います。
みんなが去ったボウリング場。いつもの奥の奥、真っ暗な駐車場に車を止め、その中に僕とあゆみさんがいました。
『あゆみさんにいいこと見せようと思って、そしたら失敗したわぁ~。』と、僕が先に敗戦の弁を述べます。
『チューするとか言うからやわ~。』と笑われました。『けど、それで優勝したら、格好よかったやろ~。』と負け惜しみを言って返しました。
しばらく話が続き、『ところで、7位の御褒美はなにぃ~?』と聞いてみます。何位でもいい、理由をつけて、彼女とキスのひとつもしたかったのです。
『ないわ、そんなもん。』と言われ、僕の魂胆は読まれています。しかし、『ああ、あったわ~。あったあった~!』と彼女は言います。
『なに?』と聞きました。すると、『今度、1時間くらいおちんちんをしゃぶってあげるわぁ~。』と、とんでもない御褒美が用意されていたようです。
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