少し腰を屈ませ、あゆみさんが部屋選びのパネルのボタンを押します。僕に相談はなく、彼女が選んだのは白っぽい壁の、清潔そうなごく普通のお部屋でした。
キーを受け取り、エレベーターに乗り込みます。あゆみさんは、慣れたような雰囲気を出そうとしていました。それが逆に、『緊張』を感じさせたのです。
扉を開けて、部屋に入りました。靴を脱いで、ベッド辺りに足を運ぶと、ようやく明るくなり、その部屋全体がわかります。
写真では白っぽいイメージの部屋に思えましたが、照明の加減なのか、全体的にオレンジ掛かっている、そんなお部屋でした。
あゆみさんはハンドバッグをテーブルに置くと、ベッドに座り込み、『いい部屋やねぇ~?』と言いながら、上着を脱ぎ始めます。
ストッキングも丸めながら下ろしてしまい、気がつけば早々に黒のキャミソール姿になっています。先手を取られました。
僕が躊躇をしている間に、『こんな場所には慣れてるわよ~。』とばかりに、さっさと先に脱がれてしまったのです。
僕も上着に手を掛け始めます。一枚一枚脱ぎながら、『どこまで脱いでいいんだろ~?パンツまでかなぁ~?』と考えながらの行動となります。
上はTシャツ、下はトランクス、僕の脱衣はここで止まりました。
『お風呂入るよねぇ?』とあゆみさんが立ち上がり、お風呂に足を向けました。黒のキャミソールが、僕の前を横切ります。
透けたキャミソールから、彼女の下着も黒系であることがわかります。そして、彼女の後ろ姿を目で追うのです。
『?』、彼女の後ろ姿を見て、僕の頭にクエスチョンマークが浮かびます。なにか、不自然さを覚えてしまったのです。
とても細い彼女です。腰もくびれ、お尻も小さく、スレンダーな彼女。しかし、その姿を見ても、スタイルの良さを感じないのです。
お尻は弛んだ皮が垂れ下り、身体のあちらこちらにもそれを見ることが出来ます。『56歳の熟女の老い。』というのとは、少し違うように思えました。
浴槽の蛇口をひねった彼女が、再び僕の前に現れます。正面から彼女を見て、その不自然さを探ろうとしてしまいます。
その時でした。『だらしない身体やろ~?これ、仕方ないのよ~。』と、僕の目線に気づいた彼女が、先に言って来たのです。
『痩せたのよ~。ちょっと前まで、私おデブちゃんだったんよー。』と、その一言で全てを理解します。
普段、サイズの合わないダボダボな服を着ていたのは、そのためなのです。急激にダイエットしたために合わなくなり、ベルトや紐で締め付けていたのです。
背中に触れた時もそう。スベスベの肌ではないのは、彼女の身体がまだダイエットに追いついていないので、皮が余って締まりきっていないのです。
パーツの割りにアンバランスな体型なのは、そんな理由があったのです。
『はだか見ても、汚ないとか言わんとってよー。』、恥ずかしそうに言った彼女。ベッドに腰掛けていた僕は手を延ばし、彼女を隣に迎え入れました。
ベッドに腰掛けたあゆみさん。先手を取ろうと、何かを話し始めます。しかし、話す内容などまとまっておらず、そのたどたどしさは僕に隙を与えました。
僕の片手は彼女の頭に乗せられ、もう片方の手は彼女の左の肩をつかんで、彼女を引き寄せ始めます。なんとか話をしようとするあゆみさんも止まりました。
『もう~。好きなんやから、キスさせてよ~。』と言ってあげると、彼女の目が変わりました。瞬間的に『女の目』になったのです。
身体に勢いがついて、先に相手の胸に飛び込んだのはあゆみさんの方でした。僕の首に手を回し、唇を重ねて来たのです。
激しくキスを求めて来る彼女の口からは、『ウゥ~ン…、ウゥ~ン…、ウゥ~ン…、』と何度も声が溢れます。
スイッチが早々に入ってしまい、何度唇を重ねても欲求が勝ってしまっています。満足が得られず、がむしゃらに僕の唇を求めていました。
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