『夢野さんところ、うちでCMしない?』と連絡がありました。もちろん、高橋香澄本人さんからです。CMと言っても、CATV内だけの寂しいCMです。
ほとんど、普通の方の目には触れません。実際見ますが、ほんと安っぽいです。値段を聞くと、ビックリするような安価。
割りに合うのかは分かりませんが、それでもテレビのCMです。かなり迷いました。そして、『私が行ったらやる~?』と彼女からいたずら気味に言われます。
その夜、本当に家に高橋香澄が現れました。アナウンサーではなく、営業としてです。小さなCATV会社、彼女もアナウンサー業だけではダメなのです。
もちろん、『やる、やらない』の段階です。彼女もたいした資料は用意していません。おかげで、話は10分程度。彼女に乗せられ、契約をしてしまいました。
契約をすると、『あぁ~、取れた取れた。ありがとうございまぁ~す!』と彼女が砕けます。かなり、僕に気をゆるしているようです。
『高橋さんだったら、いくらでも取れるやろ~?』と聞くと、『ないない。そんな簡単じゃないよ~。』と苦労を語るのです。
『けど、この前誘惑してよかった~!』とあの盆踊りの日のことを話すのです。『手、握ってたやろ~?(笑)』とバレていました。思わず赤面します。
『これであいこよね。』と意地悪に言われ、『CM代で?高い~!!メチャ高い~!!』と笑って返します。
『ええぇ~?高い~?手、握られたんよ~?私、警察行くでぇ~。』と言われ、負けました。
CM撮影が行われ、僕はワンカットだけ出演をするようです。あとは、適当に向こうが作るとのこと。残念ながら、その撮影には香澄さんは現れませんでした。
その夜、『こんばんはぉ~!』と言って、香澄さんが現れました。『上手く撮れた~?』と聞かれ、『よくわからん。』と答えました。
『これ、食べよ。』とお菓子を持って来られ、一緒に食べます。すると、『~~工業の夢野です!』と香澄さんが僕の真似を始めます。
明らかにからかっていて、『高橋さん、もう見たやろ~?』と昼間の撮影のことを聞きます。
『見た見た!さっきまで見てた!』と、ここに来る前まで編集に付き合ったそうです。『なんや~、もう見てるんやん。』と笑って返します。
それ以降も、『~~工業の夢野です!』『~~工業の夢野です!』とからかわれ、もうそれはギャグ扱いです。
『こう言うときは、ちゃんと笑顔で、こうやらんとダメよ~。』とダメ出しをされる始末。『だって、OK出たもん。』と撮影のことを伝えます。
『なら、ちょっと見せて。やってみて。』と言うと、背筋を延ばし、『~~工業の夢野です!』と笑顔で言うのです。
見事でした。作り笑顔もカンペキ。声も充分に通っていて、熟練アナウンサーの力を存分に見せつけられます。
『なら、僕のカットしとって。高橋さん、代わりにやって。』と頼むと、放送をされたCMに見事それが反映をされたのです。
『~~工業の夢野です!』と僕と香澄さんの二人が同時に喋るという映像になっていました。
後日、彼女から電話があり、『どうやった~?』と聞かれ、『よかったと思います!』としか答えられませんでした。
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