結局その後はほとんど朝まで眠れない時間をベッドで過ごした。そして夫と娘をいつもと変わりなく送り出すと大急ぎで家事を終え風呂に入った。
「今日はお茶だけだから・・・でももしかしたら。なんて(笑)無い無い。会うだけだし」自分に言い聞かせるように浴槽の中で呟いた。
風呂から出て着ていく服を選ぶ。「下着はこれにしようかな」青のTバックと青のブラのセットを引き出しから引き抜き身に付ける。そして水色のワンピースを出すと身に纏った。
胸元が大きく開きウエストが絞られたそのワンピースは男達の視線を独り占めするには十分過ぎる程の魅力を翠から引き出した。
身支度を整えると翠は黒のロングコートを手に持ち、アウディに乗り込んだ。荷物を助手席に奥とエンジンをかけ静かに動き出した。
「今からならちょうどいい時間かな」
××駅の近くのコインパーキングのなるべく目立たない奥に車を停めるとコートを羽織り駅の改札に向かった。
約束の5分前、時計の下に目をやるとスーツ姿の男が辺りを気にしながら立っている。翠はゆっくりと近づく。男は翠を見つけるとニコリと微笑み自己紹介をした。田辺と名乗る男は48歳でサラリーマンをしてるという。今日は家には仕事だと言って出ているので今まで時間を潰すのに苦労したらしい。
「だったらもっと早い時間を仰ってくれたらよかったのに」そういう翠に「いえ、こちらは会って頂く立場ですから・・・」と控えめに答える。
(この人、ずっとこうやって相手に合わせながら生きてきたのかなぁ)翠の頭にそんな考えが浮かんだ。
「それじゃお食事でもしましょう。美味しいパスタを出す店があるんですよ、量は少ないんですけど」
男の案内で駅から程近い店に入った。お昼時というのもあってそれなりに混んでいたがなんとかテーブル席に着き量の少な目なパスタを食べた。
「この量だったらこの後、ケーキも食べられますよね?」「えぇ、美味しいケーキなら」「もちろん。私、甘いものは苦手なんですがそこのケーキは美味しくて食べられるんですよ」レストランを出てすこし歩くと目当ての喫茶店に入った。
二人ともケーキセットを頼むと少しの沈黙が訪れた。
「あの・・・」田辺が口を開いた。
「今日のお洋服、凄く素敵です。まるでモデルか女優みたいで」褒める事に慣れていないのだろうかうつむきながら小さな声で呟いた。
「そうですか?ありがとうございます。ちょっと大胆かなって思ったんですけど」うつむく田辺の顔を覗き込むように翠は上半身を少し前に倒す。
胸元から谷間が丸見えになり青のブラが田辺の目に入った。
「あの・・・凄く素敵なスタイルされてますね・・・それでご主人とは・・・その・・・回数があまり無いって事だと・・・」目線を合わせず田辺が小声で言う。
「そうですね・・・いい人なんですけど。仕事が忙しい人で。やっぱり自分もまだ女でいたいし・・・」(あぁ、言っちゃった。これはこの後誘われるかなぁ・・・)
「そっ、そうですよね、そんなに素敵なのにもったいないですよ。もっと女であることを楽しまないと」
その後、少しの沈黙が訪れ、運ばれてきたケーキと紅茶に口を付けた。
「私、手相を見るのが趣味なんですよ、翠さんの手相見せて頂けますか?」そう切り出した田辺に「そうなんですか?ぜひ見て下さい」と右手を差し出した。
「手相ってのはどっちの手を見るかって諸説あるんですが私は出してくれた方の手を見るんですよ。この手相は・・・」男のわりには柔らかい手で翠の右手を優しく包む。
「見事に欲求不満線と浮気線が出てますね。ほらここに」田辺の人差し指が翠の手のひらの皺を指す。
「えっ、ヤダッ、嘘でしょ」驚きの言葉が翠の口から飛び出す。
「手相は全てが出るんですよ。これはおそらく・・・ご主人と回数をこなしても満足しないなぁ・・・ご主人じゃ翠さんを満足させられないでしょう?行為をすることで心は満たされても肉体は満足してないんじゃないですか?」
図星だった。
翠は心は満たされても肉体が満足することはほとんど無かった。
「そんなの手相に出るんですか?なんだか怖い」
「詳しく見ると・・・結構性欲は強い方ですね。自分では気付いてないかな?ただ自分から誘うには抵抗がある。そういう女だとは思われなくないんですね?」
翠は力なく頷いた。
「出会い系を覗いてしまう位ですから相当溜まってますね?」
「いえ、そんなつもりじゃ・・・」慌てて否定する翠に「いいんですよ、翠さんが悪い訳じゃない。周りの男が悪いんですよ。女性を満足させるのは男の務めですから」
「そんなこと・・・」
「あなたは美しくて賢い女性だ。石鹸の香りはするのに香水の匂いがしない。風呂には入ったけれど相手に匂いが移らないように香水は控えたんじゃないですか?」
「えぇその通りです」(へぇ~そこまで気付いてるんだ)
「こんなに素晴らしい女性を満足させられないなんて・・・情けない男もいるもんですね。私なら・・・」
「えっ?」笑って翠は聞き返した。
「満足させてくれるんですか?」
思わず笑ってしまい口を隠しながら言った。
「えぇ、いやどうでしょう、そういうのは相性がありますから・・・って逃げ道を作っておかないと」ばつの悪そうな顔をして田辺が答える。
「ただ・・・」
「ただ?」翠が胸の谷間を見せるように再び田辺の顔を覗き込むと田辺も顔を近づけて囁いた。
「20センチぐらいあるんです」
二人の時間が一瞬止まった。
「えっ?えっ?」訳が分からないような翠の腕に田辺が人差し指を立てる。
「中指の先からこれぐらいですかね」
「そんな・・・そんなに?」
「えぇ、ただ私とした女性が皆満足してくれてるかどうかは分かりませんけど。ただね・・・」
「ただ?」
翠が田辺に顔を近づけると「その・・・女性はみんな痙攣してオシッコを漏らしちゃうんですよ」一瞬田辺のいやらしそうな顔が見えた。
「中には根元まで入らない人もしますし、旦那ではもう満足出来ないって方もいます」
翠は話を聞きながら体の奥が熱くなるのに気付いた。
「最初は皆さんゴムを着けてって言うんですがそのうち生で入れてくれって。やっぱり粘膜に直接擦れる方が気持ちいいみたいですね。私の上に跨がって髪を振り乱して狂った様に腰を振るんですよ。私も胸の大きな女性を上に乗せるのが好きですね。特に翠さんみたいな美人なら最高だろうな」
手相を見るために握っていた田辺の手がイヤらしく翠の手を撫でる。
「翠さん、子宮口をつつかれるの好きですか?」
顔を赤らめて翠が答える。
「いえ、そういうのは・・・」
「本当は経験したことが無いんでしょう?」
ズバリ言い当てられた翠は黙って頷く。
「これは・・・本当に女の喜びを知らないんですねぇ・・・もったいない」
二人のペースは完全に田辺のものになった。
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