「彼…きっと冴子のこと知らない世界に連れて行ってくれるわよ」
フロントでレジカードに記入している、高崎さんの背中をじっと見つめて真由が囁きました。
ホテルに向かって歩いている時から私の足は震え、掌はじっとりと汗ばんでいます。
「やだあ、変なことを言わないでよ」
内心では多少の期待をしながらも、真由に対してはまだ自分自身を取り繕っていたのかも知れません。
或いは羞恥心だけが現れていたのでしょうか、いずれにしても素直じゃなかったことだけは確かです。
エレベーターの中では、心臓の音が聞こえるんじゃないかと思うほど鼓動が高鳴り、身体を縮こまらせていた私の肩に、高崎さんがそっと腕を回して優しくリードしてくれました。
誰も口に出して確認しないのに、それぞれのお部屋に入る時には、当然のように私は高崎さんと、真由が松山さんとのカップルが成立していました。
浮気?不倫?不貞行為?頭の中に浮かんだ言葉の全てを吐き出すように、私は大きく溜め息を吐くと意を決してお部屋に足を踏み入れました。
口から心臓が飛び出してくるんじゃないかと思うほど、ドキドキは激しくなっていましたが、そっと肩を抱かれてキスをされ、私の中で緊張の糸が切れました。
彼の身体に腕を回して唇を貪りました。
恥ずかしさを打ち消すために…
でも唇を離した途端に余計に恥ずかしさが増して、顔から火が出るかと思うくらい熱く感じていました。
彼がバスルームに消えると、私の頭の中では色んな思いが交錯しています。
良いの?冴子…初めて会った男性とこんな事をしていて…
絶対に後悔しないの?
このまま帰った方が良いんじゃないの?
初めての体験に対する怖さとそれに…
真由が言っていた知らない世界…
私の心は揺れ動いていました。
でも…バスローブで身を包んで出てきた松山さんの姿を見て、私の気持ちは決まったんです。
戻らない。
禁断の世界かも知れないけど、私は今から一歩踏み出して行きます。
バスタブに身体を沈めた私は、これから始まることを想像しながら、そっと指をあそこに這わせてみました。
お湯とは異なるぬめりを感じて顔が熱くなり、慌ててシャワーで流したんです。
指先にチクチクと当たる感触に気づいた私は、そっと洗面所に出て剃刀を手に取りました。
全く予定外の展開でしたから、当然下の毛のお手入れなどしていなかったんです。
まさか彼が入ってくる筈がないと思いましたが、ドアの方に細心の注意を払いながら、大きく足を拡げた私は剃刀を滑らせていきました。
前の部分の形を整え、秘密の入り口の両サイドは丁寧に剃りあげていきました。
いつもそうしているように。
脱衣場に出た私はまた考え込んでしまいました。
こんな場合は女として、必ず着替えの下着を用意しておくべきなんですが、やはり突然の出来事だった為に、バックの中には何の用意もしていなかったんです。
散々悩んだ挙げ句、私は下着を着けないでバスローブを着るという選択をしました。
汚れた下着を男性に見られるなんて、とても考えられなかったからです。
本当ならブラジャーもパンティも身に着けてから、バスローブを着たかったんですが、仕方なく私はバスローブだけを纏って出ていきました。
ソファに腰を下ろしていた彼が立ち上がると、大きく腕を拡げて私を迎えてくれました。
裾の乱れを気にしながら、私は彼の胸に抱かれて唇を重ねます。
舌を絡め合う激しいキスの後、彼が優しく訊ねてきたんです。
「決心はついた?」
私は彼の胸に顔を埋めたまま小さく頷きました。
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