「わかりました、女王様。」
健二は盗聴音声を聞きながら頭が熱を帯びてクラクラしてきたのだった。
「どう? おいしい?」
「ハイ、女王様の乳首おいしいです。」
「ううっ、あたしも気持ちいいぞ、さ、左も舐めなさい。」
「ああ、左の乳首もおいしい。」
「よし、じゃあ跪いてあたしを見上げなさい。」
「ハイ、女王様。」
「口を大きく開けなさい。」
「ああああー」
「さ、ヨダレを垂らすぞ、全部飲み込むのだぞ」
「はい・・・あああーおいしいです。女王様のヨダレがおいしい」
「よし、ご褒美にお前のチンコを舐めてやる。嬉しいか?」
「はい、嬉しいです。」
「さあ、床に寝ろ。」再びピシッという鞭の音、今度は床を叩いているのか。
おそらく口で肉棒をすする音、黒岩が時々気持ちよさそうに呻いている。
「もう逝きそうか?」と里奈。
「はい、もう我慢の限界です。」と黒岩。
「だらしないぞ、豚野郎!」 また鞭が肉を打つ音とともに里奈の声。
「許してください、女王さまー」黒岩の野太い声。
健二は自分の妻の豹変ぶりが信じられなかった。一体自分が妻の里奈だと思っていたのは
誰だったのか。有名政治家の黒岩がサディスティックな女王に変身した妻に性の奴隷に
されているのである。
精神的に相当にきつくなって健二は再生を止めると、寝室に行って里奈の横に座り、
妻の寝顔をじっと見つめた。こんなに身近にいながら、妻は健二の手の届かない
遠くに行ってしまったような気がした。明日もう一度録音を聴きなおすことにして、
妻の肩に顔をあて、昨夜までとは少し違う妻の匂いを嗅ぎながら、健二は眠ったのだった。
翌日、会社でのこと、社内のパソコン上の掲示板に上杉副社長の訓示が掲載されていた。
「・・・・・このように変化の激しい時代にあっては、社員の一人一人は今ある能力
のみならず、潜在的能力を開発し我が社に貢献しなければなりません。そのためには、
それぞれの多様性を認め、それを尊重し、時には大胆に進む必要があります。そのような
人材には、我が社は十分な報酬で報いる用意があります。是非とも従来の常識に縛られず、
自分が何を必要とされているのかを知り、あるいは自分の必要性を他者に知らしめて、
自己の職務に邁進して頂くよう切に希望致します。」
色々な意味で一つ一つの言葉が健二には違う意味に聞こえ、気分を憂鬱にさせたのだった。
帰宅すると里奈が入浴している間に、健二は再び昨夜の続きの録音を聴いてみた。
妻が黒岩に騎乗位になって腰を振っているらしかった。
「どうだ、ヒロシ、、、気持ちいいか」
「、、、、ハイ、女王様、気持ちいいです。」
「さっきより、お前のチンポ、硬くなっているぞ、逝きそうなのか?」
「女王様のオマンコ、きつくなっています、もうダメです、逝きます。」
「いいぞ、逝っていいぞ、出していいぞ、ああっ、ふあああっ、、」
「中に出してもいいですか、うううう、出しますよーうううん、、、」
「ふあああああ、全部、全部、あたしの中にだしてー、、」
激しい動きの音が突然止まり、ハアハアという荒く息をする音だけが聴き取れる。
黒岩が妻の中に射精して逝ったらしい。
その後しばらくはガサゴソと何かをする音、
やがて、黒岩が
「里奈さん、ありがとう、気持ちよかったよ」
「あたしも気持ち良かったですわ、先生ホントにすごいですわよ。」
それから黒岩の申し出で、シャンパンとオードブルのルームサービスを頼み、
ルームサービスのボーイには黒岩が対応、その間里奈はバスルームに隠れていて、
ボーイが去ると再びシャンパンを飲みながら楽し気にSMプレイをしていた。
音源を早送りに聴いていた健二は内容が大体分かるとパソコンを閉じた。
ちょうど里奈が入浴を終えて下着姿で髪をタオルで拭きながら出てきたところだった。
「健二さん、お仕事の方はどーお?」
「うん、新しい企画の担当になってるけど、今のところ順調だよ。」
「そう、良かった。」
「でも、来週からは帰りが遅くなるかも。」
「そう、遅くなる日は教えてね、お食事の用意があるから。」
「わかった。」
「それとね、まだ分かんないんだけど……」
「何?」
「あたし妊娠してるかも・・・」
「ほ、ほんと?」
「まだ検査してないけど、生理が来ないの。」
「し、調べてみないと………」
「明日検査キット買ってくるね」
「う、うん」
「貴方…」
「え?」
「うれしい?」
「き、決まってるじゃないか。」
快活にそう答えながらも健二の心は複雑だった。
里奈が身籠っているのなら、果たして自分の子だろうか。
上杉や鵜久森の子ではないと言えるのか。
結婚して4年経ってようやく出来た子が、もしも自分以外の子種だったら。
その事はDNA鑑定すれば簡単に分かるに違いない。
その結果もしも自分の子ではないと分かったら………。
考えているうちに健二は息苦しさを覚え、
呼吸が早くなるのを懸命に我慢していた。
「明日が楽しみだわ。」
という里奈の言葉がSM姿の里奈のイメージと重なって、
拷問の鞭のように健二の心を強く打つのだった。
次の日、健二は仕事に集中出来ず、何度も企画書の文章を手直ししなければ
ならなかった。早々に仕事を切り上げて、高まる緊張感を胸に帰宅すると
里奈が健二の帰りを待っていた。
「どうだった? 妊娠反応??」
「今持ってくるね。」
妊娠反応キットは横の判定見本通り線が一本出れば陽性である。
里奈がトイレから神妙な面持ちで妊娠反応キットを持ってきた。
判定結果は疑いようもなく陽性だった。
妻里奈は妊娠している。
健二には自分の子だという確信がない。
「これ、俺がパパになったてことなんだよね。」
「そうよ、健二はパパになったのよ。」
「そうか、里奈、ありがとう。」
「あたしも嬉しいわ。」
「女の子かな、男の子かなあ。」
「まだ分からないよ。」
「あ、そうか、そうだよな、アハハハ」
「健二、愛してるわ。」
「俺も愛してるよ。」
健二はこれが自分の運命なのか、と思い始めていた。
美しい妻、順調な仕事、会社で大失敗をしながら、同期入社の誰もが羨む
仕事への抜擢。まだ健二の子でないと決まったわけではなかったが、
里奈が他人の子を宿してもしかたがないと思い始めていた。
実は健二には兄がいたが結婚した後に無精子症とわかり、
精子バンクに頼って子供をつくった経緯があった。
その事実を健二は昨年兄から知らされていたのだった。
兄は健二が結婚後も子供が出来ぬので、秘密にしていたことを健二を
心配して話したのだった。兄は健二に検査を受けるように勧めたが、
健二は病院には行っていなかったのだ。
次の週末に健二は仕事で1泊2日の予定で出張しなければならなかった。
健二は、里奈はその日に上杉に会う予感がして、以前のように自宅の
寝室にウエブカメラを設置し、タブレットで外出先でも自宅の様子が
見ることが出来るようにした。また、里奈が外出する場合も想定して
ハンドバックに盗聴機を忍ばせておいた。
出張先のホテルの部屋でタブレットの画面で自宅を盗撮していると、
やはり健二の予想通り夜に上杉が健二の自宅の寝室に入ってきた。
「この部屋に来るのも久しぶりだな。今夜は話があるって何だい?」
上杉は背広を脱ぎ、ネクタイを緩めながら里奈に聞いた。
里奈はハンガーに上杉の背広を掛けて壁のフックに吊るすと、
「あたし、妊娠したの。」
「あ、そうか、そりゃ良かったよ。で、父親は………」
「もちろん健二さんの子ですわ。」
「……そうだよな、私はバカな事を言ったね。うん、
健二君の子に決まっとる。」
「そうですわよ。それでなんですけど、今までのように上杉さんにも
毎週会うことはできなくなってしまいますわ。」
健二はウエブカメラでその会話を聴きながら、健二が単身赴任から帰って来た後も、
毎週里奈が上杉と会っていたという話に愕然としていた。
上杉は少しがっかりした声で
「そうか、そうだろうな。間隔を空けてでもいいから、また良い時期に
声をかけてくれないか。妻も無く子もいない一人者だからな。
それと、私が里奈さんのために出来ることは、何でも
させて頂くつもりだから、何時でも言ってください。君は家族も同じ
だからね。いや、君さえその気なら家族になってほしいと思ってるんだ。」
「まあ、副社長さん、あたしには大切な夫がおりましてよ。」
「あ、いや、そうだったね。つい調子に乗ってしまったようだ。
里奈さん、今夜はじっくりと君を愛させて頂くよ。」
上杉は立ったまま里奈を引き寄せて深いキスをした。
それからワイシャツのボタンを外し上半身裸になると、
里奈の服を脱がせた。ゴルフ焼けした50過ぎの男のからだと
下着姿の26のスタイルの良い色白の女のからだがもつれ合い、
絡み合いながらベッドの上に倒れた。
深いキスのあと、上になった上杉は里奈の首筋から乳首を吸い、
脇を舐めて味わい、キスをしながら下へ移動し、特に下腹部は
念入りに舐めていた。やがて里奈の陰毛にたどり着くと、
その臭いを嗅いで顔を左右に振って鼻を擦り付けていた。
そして里奈のマンコに舌を這わせ、ここも丁寧に舐め上げていた。
里奈は声を上げて大きくのけ反り、両手で上杉の頭を包みこむように、
持っていた。まるで離別を惜しむ恋人のようだと健二は思った。
やがて上杉は里奈の股間から顔を起こすと、いきり立った自分の肉棒を
里奈のマンコに擦り付けるようにして、ゆっくりと挿入した。
上杉がゆっくり腰を動かすと里奈は首を左右に振って喜びの悲鳴をあげた。
しかし上杉は腰の動きのピッチは上げず、直ぐに里奈の舌を求めてキスをした。
少し腰を動かしてはキスをして、まるで言葉にならない感情をからだで伝えあう
ようなセックスだった。健二は画面で繰り広げられる妻と上杉の交わりを、
激しい嫉妬と興奮で見つめていた。またしても健二の股間は最大限に硬くなり、
パンツの中で跳ねていた。健二はその肉棒を自分の手でなだめてやるしかなかった。
手で擦るとすぐに射精感が沸き上がり、どくどくと精液をパンツの中に出してしまった。
健二の思いとは関係なく里奈と上杉の交わりは画面の中で続いていた。
上杉はその夜、里奈に正常位で射精した。
里奈に射精する瞬間の上杉の腰は密着するために、臀部の筋肉が窪むほど
しっかり力を入れていた。射精したあとも里奈と離れようとはせず、
何かを里奈と話していた。音量を最大にして健二は会話を聞き取ろうと
した。
「私と健二君のセックスとどっちがいいかい?」
「健二さんはあたしの大切な旦那様よ。あたしはだから
健二さんを一生懸命喜ばせたいの。上杉さんは素敵なおじさま。
だから上杉さんが一番あたしを気持ちよくしてくれるのだわ。」
「そうか、嬉しいよ。」
挿入したまま上杉と里奈は長いキスをしていた。
妊娠4か月が過ぎて安定期に入ると、健二は里奈の性欲を
もて余し始めていた。里奈はおそらく胎教を考えて、上杉と
の逢瀬を控えていた。そのために健二が里奈の性欲のすべて
を引き受けることになったのだが、上杉に開発された官能は
もはや健二ひとりの手には負えなくなってしまっていたのだった。
言葉に出してこそ言わないものの、明らかにセックスのあと
里奈が満たされていないのが健二は分かっていた。
健二はコトが終わると仕事の忙しさも関係して、さっさと
眠ってしまう。上杉のように時間をたっぷりかけて里奈と
セックスを互いに楽しむことをしない、と言うよりは、できない。
結果的に妻に不満が堆積しているのは明らかだった。
妻が不機嫌になるのは胎教にも良くない。
その解決策に健二は仕事のための出張を会社に申請して、2泊
家を離れることにした。本来は部下にさせたので十分な仕事だったが、
2泊留守にすることで上杉が里奈を抱き易くなるであろう。
そうすれば里奈もまた満たされるに違いない。そしてその
行為の盗撮は健二の最高のオナネタにもなる。
誰もがそれで満足出来るのなら決して悪いことではないと健二は
考えたのだった。
そして遂にそれを実行に移したのだった。
以前そうしたように健二は出張先のホテルの部屋で、
夜、タブレット上に写し出される自宅寝室のウエブカメラの
映像を見ていた。その夜、健二の予測では上杉副社長が現れる
はずであった。ところが里奈と寝室に現れたのは別の男だった。
健二は最初、その頭の禿げた男が誰か分からなかった。
その男は健二の勤めている会社と提携関係にあるK社の鵜久森社長だったが、
以前盗聴した音声で声は聴いていたが、現在の風貌は知らなかったのだ。
K社のホームページには50代のころの、まだ頭髪のあったころの写真が今も
掲載されていたのだった。鵜久森は小肥りで、下腹部がやや出てはいるが、
引き締まったからだをしていて、たぶんゴルフで鍛えているのだろう。
だが、どう見ても60代半ばの男は里奈と親子ほどの差がある。
「里奈さん、本当にここに来て良かったのですかね。いや、
私は嬉しいのだが、ここは夫婦の寝室でしょう。」
「夫から電話があるといけませんから、ここでよろしいですわ。」
「里奈さん、妊娠5か月ということじゃが、もしやその子は私の子種という
可能性はないのかね。」
「違いますわよ、正真正銘夫の子ですわ。」
「そうかい、そりゃ残念だ、もしや私の子ではと期待しとったのじゃが。
ところで、里奈さん。私の会社で働いてみないかね。秘書が近々1人寿退社
するのでね、秘書課に来てほしいのじゃよ。無論、上杉副社長には許可を
もらっておるので、里奈さんさえ良ければ、という事なのじゃが。」
「今日の昼に上杉さんから電話を頂いて聞いておりますわ。
主人とも相談して決めたいと思いますが、主人に何て切り出そうかと
考えてますの。」
「そうだな、高校の同級生がわが社の社員で、その紹介とか……うーん、
また考えておくよ。今日は久しぶりに楽しませてもらうよ。」
健二は自分が全く知らぬ間に、自分の妻の運命が決められて行くのに驚き、
改めて里奈のお腹の子の父親が誰なのか、疑問を感じ無いわけには
いかなかった。
鵜久森は里奈に言った。
「お風呂に入れさせて頂けないかな。出来れば里奈さんと一緒に入り
たいのじゃが…」
「よろしいですわよ、準備しますからしばらくお待ちになっててね。」
そう言うと里奈は寝室から出ていった。
鵜久森は1人寝室に取り残されると、棚に置いてある健二と里奈の
記念写真を手に取って見たりしていた。それは4年前に新婚旅行で
行ったハワイのワイキキビーチで撮った写真だった。21歳の
スタイルの良い美人の里奈と、冴えない風貌の27歳の健二が
水着姿で満面の笑みで写った写真だった。鵜久森はじっと見ていたが
ふふふふと淫靡な笑いの後、それを棚に戻した。
健二はタブレットに写し出される映像に、激しい怒りを感じながらも、
成り行きを興味津々で見つめていた。
その時里奈が部屋に入ってきた。
「社長さん、お風呂が入りましてよ。」
鵜久森と里奈が寝室から出て1時間近くが経過して戻ってきたとき、
二人とも裸にバスタオルを巻いた姿だった。
「里奈さんはフェラが上手いなあ、危うく逝かされそうだったよ。」
「あら、よろしいじゃありませんの、おもいっきり逝ってしまえば。」
「そうはいかんよ、私も歳だから、一晩に一回しか逝けないからね。」
「そうかしら、社長さん、まだまだ出来そうに見えますわよ。」
「アハハハ、そう言って貰うと元気が出るがね。さあ、ここに座って。」
鵜久森はベッドに腰掛けると、里奈を隣に座らせキスを始めた。
禿げた頭の60過ぎの男が若い里奈を引き寄せて、太い舌を里奈の口に
入れていた。里奈もそれに応えるように小さなピンクの舌をチロチロと
突き出している。鵜久森は里奈の唾液と自分の唾液を絡めるように、
里奈の舌を吸ったり、自分の舌を里奈の口に侵入させたりを繰返した。
里奈から甘いため息がでると、鵜久森はそれを合図に里奈のからだに巻いた
バスタオルをほどいた。スリムなからだの割に豊かな乳房が現れた。
鵜久森は里奈の乳首に口をあて、まだ出ぬ乳を求めるように音を立てて
吸った。里奈は軽く声を上げたあと、自分の乳を吸う鵜久森の禿げた頭を優しく撫でた。
健二はタブレットに写し出されるその衝撃的な妻と鵜久森の行為を、
出張先のホテルの小部屋で見ながら、いきり立つペニスを切なくしごいていた。
里奈は鵜久森のバスタオルの下に手をいれて鵜久森の肉棒をしごき始めた。
鵜久森はベッドに里奈をゆっくりと押し倒した。
からだをずらせて里奈の両足を開かせると、彼女の股間に顔を埋めた。
犬が皿のミルクを飲むようにペチャペチャと音を立ててそこを舐めると、
里奈の喘ぎが次第に激しくなった。里奈は両手で鵜久森の禿げた頭を股間に
押し付けると、小刻みにからだを震わせて軽く逝ったようだった。
鵜久森はその様子をみて、里奈の恥丘の上あたりを優しく撫でながら、
「本当はここに私の子がいるのじゃろ。」
と言うと、里奈は首を左右に振った。
「さ、今度は私のおちんちんを舐めておくれ。」
里奈と入れ替わるように鵜久森が寝て、里奈が鵜久森の開いた両足
の間に顔を埋めた。里奈がじゅるじゅるとイヤらしい音を立てて鵜久森の
肉棒をしゃぶると、鵜久森は口を半開きにして呆けた面持ちになった。
肉棒を口から音を立てて抜くと、里奈は今度は鵜久森の陰のうを舐めた。
健二は、妻が鵜久森にするその光景に耐えられなくなって、
しごいていた手の動きを速めると、
ウオーとケモノの咆哮のような声を上げた瞬間、射精した。
ホテルの小部屋の黒い床に、行き先を失った精液が無惨に飛び散った。
鵜久森は、そろそろ入れさせて貰うよ、と起き上がると里奈を
四つん這いにさせ、里奈のフェラで硬くなったペニスをバックから
挿入した。白肌の傷ひとつない丸く大きなヒップに、鵜久森の黒光りする
肉棒がゆっくりと突き刺さった。鵜久森は大きく感嘆の息を吐いた。
ゆっくりと腰を動かしながら
「お腹の赤ちゃんが驚くといけないから、今夜は後ろからさせて貰うよ。」
鵜久森が気遣うように言うと、里奈は、すみません、と返していた。
やがて肉を打つリズミカルな音を立てて腰の動きが速くなると、
「おお、すごい、里奈さん、行くよ、里奈、里奈、里奈、、、おお、、、」
「きてー、きてー、中に出してー、精子いっぱい頂戴。」
汗をにじませて、禿げた中年男と若い女が官能の高みに向かって突き進んでいた。
やがて
「逝くぞ!!」
と気を込めて鵜久森の腰が深く打ちやむと、里奈がガクガクとからだを震わせて
逝ったのだった。鵜久森が男の精を里奈に出し終えて肉棒を引き抜くと、
里奈は硬直したからだの力が抜けたように、うつ伏せに伸びて行った。
鵜久森は額の汗をバスタオルで拭きながら、
「里奈さん、気持ち良かったよ。ありがとう。」
と礼を言っていた。
「凄い、鵜久森さん、凄く感じちゃった。」
里奈が笑顔で応えた。
その様子を遠く離れたホテルで見ている健二はというと、オナニーをして2度目の
射精で床を汚していた
俺と言う男は何なんだ、と健二は自分が分からなくなっていた。
他人の肉棒を妻が受け入れる姿に嫉妬し、怒り狂うと同時に、
その淫靡な姿に興奮し、性欲を異常に駆り立てられて射精し満たされる。
若く、美しく、官能的で、鵜久森や上杉などの社会の成功者から愛されている
妻が正直、自慢でもある。対立するはずの感情が、今の自分の中で
バランスを取って収まってしまっている。
俺は入ってはいけない土地に入ってしまったのかもしれない、と
健二は思った。普通の人は「危険! 立ち入り禁止。」と書かれた
看板の立つ土地には入っては行かない。ところが自分はそこに入ってしまった。
そして、そこで禁断の土地の快楽を知ってしまった。
この先俺と里奈はどうなってしまうのかと、考えあぐねる健二だった。
里奈が無事に女の子を出産して6か月が経過した。
名前は健二が由奈と付けた。
健二から見て、里奈似の美人に育ちそうなきれいな顔立ちの子だった。
しかし自分に似ているかというと分からない。上杉や鵜久森にも似ていないようだ。
そもそも、健二には6か月の赤ん坊はみんな同じような顔に見えてしまう。
健二の会社での仕事はというと、重要な企画が優秀な3人の部下のおかげもあって
大成功。社内での評価が一気に上がり、特別昇給もあった。
来春の昇進は確実だろう。
健二の会社と鵜久森のK社との合弁事業も順調で、経常利益は
過去最高になると予測されている。
噂では偏屈で疑り深いことで有名な鵜久森社長に、上杉副社長が
信頼された事が合弁事業の成功に繋がったという。
ある日曜日の昼下がり、里奈は居間で椅子に座って赤子に母乳を
与えていた。新聞を読んでいた健二に里奈は、
「ねえ、聞いて、昨日昔なじみの子から電話があってね、K社の
秘書課に来ないか、ていうの。その子、来年でK社を寿退社するの。
それで上司から誰か知り合いでいい子いないかって聞かれたらしいの。
そしたら彼女、あたしと一緒に写したスマホの写真見せたら、
是非一度面接に来させて、て上司の人が言うんだって。来春からだから、
まだ先なんだけど。会社のすぐ近くに保育園があって、K社が出資していて
社員は優先的に安い料金で子供を預けられるらしいの。どうかなあ。
いずれこの家から持ち家の一戸建てに住みたいし、もう少し貯金が必要でしょう。」
健二はこの話が出ることを予測していたので、
「いいんじゃない。里奈がそうしたいなら。」
と新聞から目を離さず、ややクールな口調で答えた。
「健二さんに見てほしいものがあるの。」
里奈は子供用のベッドに由奈を寝かせると、タンスの引き出しから
何やら取り出してきた。預金通帳だった。
「健二さん、いま家にいくら預金があるか知ってるの?」
健二はお金の管理が苦手で、全部を里奈に任せていたので、
「うーん、2百万くらい?」
「そんな金額じゃないわ。」
「じゃあ、百万?」
「見て!」
里奈の渡す通帳を開くと、健二は思わず声を上げた。
「こんなに!!」
詳細な金額については個人情報であるからここでは書けないが、
健二の予想を良い意味ではるかに裏切る額であったことは間違いない。
「どうやって、こんなに貯めたの?」
健二は心の中で、誰からこんなに貰ったの、と聞きたいところだったが、
必死で言葉を飲み込んだ。
「友達に投資を教わってちょっとやってみたら、何となく儲かっちゃって。」
もはや里奈には何もかなわない、と健二は思った。
その夜健二は里奈を抱き、久しぶりに3度果てた。
里奈は出産してもいっこうに性欲は低下しなかった。
天然のセックス好きであった。
乳房は子に吸われなければパンパンに張って、
健二が揉むと噴水のように母乳が吹き出た。
ある日健二は会社でのこと、新規事業の企画書を持って副社長室の上杉の
部屋に行った。秘書に聞くと上杉は外出中とのことだったが、健二が書類
を持ってきたら自分の部屋に入れて机の上に書類を置くように言って出かけた
とのことだった。ふと、上杉は里奈に会いに健二の家に来ているかもしれない、
という気がした。何となくの予感である。副社長室に入ると机の上に書類
を置こうとしたが、不用心な気がして机の引き出しに入れようと思った。
なぜ健二がそう思ったのか健二にもわからないが、誰かに重要な書類を
盗まれると困るからというのが一番近い理由だった。もっとも、健二は
他人の机の引き出しを開けるようなことはそれまで一度もしたことはない。
しかし、その日何かの力に引かれて健二は上杉副社長の引き出しを開けた。
そして整理された引き出しの中に健二はある物を見つけたのだった。
それは黒いUSBメモリーだった。
キャップだけが赤かった。
そのメモリーには見覚えがあった。
健二がキャップを無くしたので、
別のUSBメモリーのキャップを当てて使っていたのだ。
健二はそれを手に取ってみた。
間違いなかった。それは以前K社の重要情報を入れたまま紛失し、健二の
単身赴任、妻の寝取られに至った健二のUSBメモリーだったのだ。
(どうして、これがここに・・・・・)
混乱する頭で健二は副社長室を飛び出した。
(どうして、副社長があれを・・・わからない・・・
俺はいったい今まで何を・・・・)
朦朧とする頭で健二は社外に出ると、タクシーをひろって自宅に向かった。
(わからない・・・・俺はいったい今まで何を・・・・)
自宅のドアを開けたとき上杉の靴を玄関に見つけた。
二階からはかすかに里奈の喘ぎ声が聞こえていた。
健二は気力を亡くして玄関に力なく手をついてしゃがみこんだ。
その姿は哀れな男が女神に救済を求めて祈る姿のようであった。
(おわり)
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