しかし女は「そうですね…お話しだけなら」と言った。その答えに俺は(おっ!?マジか?)と思った。女の影がお湯に浸かりながら、俺のいる方へと移動して来た。近くまで来て初めて顔が見えた。…女の顔を見て俺は思わず「あっ!?」と声を出した。女も俺を見て驚いた表情を見せた。…「昼間の財布拾って下さった方ですよね?」「はい…そうです」「同じ旅館だったんですね?」「そうみたいですね…ビックリした」「私も…」と言うと女は俺の隣りに落ち着いた。少し沈黙した後、女から「昼間はホントありがとうごさいました」とまたお礼を言い微笑んだ。俺はその笑顔に一瞬見とれたが「いえっそんな事」と言った。「ご夫婦で旅行ですか?」と聞くと「はい…夫がたまにはって言って」「仲良くていいですね」「いえ…そんな」と言った。「あの貴方のお名前は?」「あっ!?自分は加藤拓哉って言います…奥さんは?」「私は小島理恵子です」と言った。「理恵子さんですか…いい名前ですね」と言うと「いえそんな…拓哉さんはこの辺の人ですか?」と聞いた。
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