episode 6
つづき-----------------------------------
印象深く…私の頭の中に刻み込まれた駐車場…今後、2度と忘れることのない場所になった…この外灯の灯りすら同じだった…後部座席の恵(ケイ)君と、助手席の妻、相も変わらず仲良く職場の話に花を咲かす…ルームミラー越しに私は恵(ケイ)君を睨みつける…。
後ろを振り返り、笑いながら話す妻よ……だが……妻よ…お前は気付いてないのか?…居酒屋から出て来たお前は、髪を後ろを束ねていたはずだよ…。
アームレストに肘をかける私の腕には、サラサラとした感触の、背中まである長い髪が絡みつく…。
後部座席の恵(ケイ)君に撫でられ、ほどけた髪が、エロい匂いを振りまいて…振り返る度に車内に振りまかれる…。
何処を走り…何度、信号待ちし…どんな会話を交わしたか…など、記憶から消え覚えていない……気付くと、恵(ケイ)君の自宅近くにある指定されたコンビニに、私達は到着していた…。
恵(ケイ)君
『はぁ~着いたぁ!…今日は本当に楽しかったです…有難う御座います…ところで◯◯さん、気分は?もう大丈夫ですか?…かなり酔わしてしまいましたから…すいません…。』
妻
『あぁねぇ…大丈夫…大丈夫!…窓開けて冷たい風に当たっていたら酔いも冷めるわ(笑)ゴメンね心配かけて…井上君こそ大丈夫?…1人で外に吐いてたみたいだけど…殆ど車内には居てないよね!…風邪引くよ…』
恵(ケイ)君
『すっきりしましたよ…情けない姿見せて申し訳ないっす!…それから旦那さん…本当に有難う御座いました…良ければタイヤ代金を自分にも支払わせて下さい…お願いします!…金額が解れば連絡下さい…本当に、本当に…申し訳ありませんでした…』
私
『・・馬鹿たれ!・・若い奴がいちいち気にするんじゃないよ!…此方こそ、すまんね…立ち往生させて…明日は休みやろ?ゆっくり寝とけ』
恵(ケイ)君
『・・はい!・・でも…多少でも…お願いします!…気が済みませんので…お願いします!…』
私
『…んっ…解ったから…一応見積もり金額だけ教えるから…でも受け取らないからな!…よか?…』
恵(ケイ)君
『はい!…絶対に教えて下さいよ!…連絡待ってますんで!…』
妻
『そんな…いいよぅ!井上君…旦那の、自・業・自・得・やけん(笑)』
私
『・・・・(やられた!)・・・・』
引き下がらない恵(ケイ)君と連絡先の交換を交換し、私達は帰路に着く…いつも以上に、陽気で派手に、恵(ケイ)君に向かって手を降り続ける妻…ウインドウを下ろし大きな声でこう言った…。
(じゃねぇ!!また今度ねぇ!…)
また今度?…んっ…普通、月曜日ねぇ!とか、来週ねぇ!とか、…お疲れさま!…とかだろ?…まぁいい…あの光景を頭に焼き付けた私は、仕事とタバコ以外に燃えるような…忘れていた感情を奮い立たせるような…そんな生き甲斐を見つけてしまっていた…。
-------------------------------------------------つづく
※元投稿はこちら >>