episode 4
つづき-----------------------------------
白く曇るフロントガラス…私は後悔していた、なぜ!なぜエアコンのスイッチOFFにしていたのかと…無情にも車内の様子は正面からでないと確認出来ない位に…白く侵食(しんしょく)されてゆくのが解る…。
一旦、私は後退し、街路樹後方の狭い隙間に目を付けたのだ…。
(ここからなんとか無理に入り込めれば後ろに回り込む事ができるな…)
仮設的な駐車場なので、沢山の隙間があり、駐車してある車の後方には現場の資材と足場用資材が無造作に山積みされていた…。
(いける)…そう確信した私は街路樹後方の枝葉の一部分を音をたてぬように少量づつ手掴みでちぎり、横向きに入れるようにスペースを確保する事を考えつき行動に移す…。
(ザワ!…ポキッ!…ガサガサ!…ポキッ!)
なんとか頭1つ出せるスペースを確保した私は、車両左後部から様子を伺う事に成功した…。
ガサカサ…と音を立て、地道に…少しづつちぎり続けていると、突然…後部リヤウインドウが下げられた音が…。
(ウィッ…ウイィ…ウイィィィン…コトンッ…)
いきなりの事に私はビックリ!?して、開けた街路樹の隙間に頭をめり込ませた…(何だぁ!…何だぁ!…)
開かれたウインドウ、中から2人の声が聞こえてくる…車内に見えるナビは、テレビ画面こそ明るいが、かなり音は絞られているようだ…音声よりも2人の声の方が優先的で鮮明に聞こえる…。
じっと…静かに…私は耳を傾ける、幸いにも、強く風が吹いてきた為、街路樹の葉の揺れる音が大きく、こちらの物音は聞こえないだろう…。
恵(ケイ)君
『やばぁ…曇っちゃったよね?…マズゥ…まずいなぁ…』
妻
『ンン…なんがぁ?…あららぁ…!…ホント…後ろは元々暗いからねぇ…横になってたから解んなかった…ははっ!!…』
恵(ケイ)君
『旦那さん、帰って来たらマズいよね…なんか変な誤解されそうやない?…もうすぐ来るかな…ヤバァ』
妻
『まだやろwww…ここから下まで歩くと時間掛かるよ!…今頃まだコンビニ辺りで友達を待ってんやない?…』
恵(ケイ)君
『なら…いいけど…帰るまでに曇り取れるかな?…暫く開けておくね…車内も熱いしね!…』
妻
『うん!…いいよぅ…じゃあもう少しだけ…少しでいいから…膝枕してくれる?…ねぇ…お願い…』
恵(ケイ)君
『んんっ…いいよ、ほらっ膝が呼んでますよ(パン♪パン暖)…でも大丈夫?気分悪いの少しは治まった?…自分で良ければ…いつでも癒してあげますよ』
妻
『ありがと…優しいね井上君は…旦那なんか自業自得だろ!ってしか言わないよ…ほんとムカつく…』
恵(ケイ)君
『あぁ…やっぱり?何処の家庭もそうなんだ…うちも親父も、そんな感じですよ…でも僕は…いや、今は違います!…いつも厳しく自分に接してくれて…でも優しいし…有難う御座います』
妻
『そんなん…此方こそ有難うねぇ…パートとアルバイト君だけど私は助かってますよ…恵(ケイ)君♪…あっ…恵君って呼んじゃったね…ゴメンね!』
恵(ケイ)君
『・・・いえっ・・素直に嬉しいですよ!…呼び捨てでいいです…』
暫く沈黙が続く…風が強く吹き、ザワザワと街路樹が音を奏でる暖…と、同時に遠くから救急車の音が近づいて来た、(チャンスだ!) 私は音が近くなるにつれ、街路樹の枝葉を無我夢中で、ちぎり…むしり取る…前へ、前へと身体を押し込み、救急車が前を通過する直前に、駐車場の中へ無理矢理、身体をねじ込んだ!…。
(ザザッ!!…ザザッ…ポキッ…ポキッ!!…)
多分2人は気付いていない…上手く音がサイレンに調和したはず…これで後方への侵入成功!…身を屈め待機し、沈黙した状況に耳を傾ける…。
恵(ケイ)
『あ…あのぅ…美佳さん…あっ…そのぅ◯◯…◯◯していいすかっ!…』
妻
『えっ?…なに?…今さっ!…美佳さんって呼んだよね?…んっ?…まだサイレンで聞こえんし…ボソボソ言わんで、男はちゃんと言わんね!』
互いに見つめ合い…互いの何かを期待している、彼の温もりの中で…妻は何を求めて、彼は何を欲しているのか
…互いに欲情した2人はいよいよ…。
恵(ケイ)君
『あのぅ…もぅ!もぅ…無理です!我慢できません!…怒られてもいいっす!…俺は!…自分は!!…優しいだけじゃないっすよ!…ンンッ…』
妻
『ん?…えっ?…なに?…えっ!…っっ…んっ!…あぁっ……ダメ!…あははっ!…モウ…ダメェッ!…ダメェッってばぁ!…恵君んっ…恵君んって!…ンンッ…もうっ…ダメェッ!…ってばぁ!…ダメだって!コラッ!…モウ…ん!…ンンッ…ンンッ…あぁ…アン…んんっ!…ンンッ…ンッ…ンンッ』
甘い…甘い一時…妻を撫でていた大きな手は、優しく背中に回り込み…抱き寄せて…妻が抵抗出来ないよう…ギュッ…と、抱きしめた…彼は何度も…何度も…妻の唇を激しく求めた…。
まさかこんな事に…私自身、今後の彼に対する期待と妻に対する失望を隠せない…もう誰も…歯車の噛み合った2人を…止めることは出来ないだろう…。
------------------------------------------------つづく
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