episode 3
つづき-----------------------------------
驚き戻って来る友人の姿、その行動はまるで獣のようだった、四つん這いのまま…かなり焦ったように、此方へと突進してくる、何を見たのか…何を私に伝えたいのか…途中、身を起こし、足早に駆け寄ってくる!…此方も身構えながら友人の車に逃げ帰る…
友人
『おぃ!…おぃ!…おぃ!…ちょ~っ…ヤバいって!…マジかぁ!…』
私
『なにっ…なにっ!…なにぃって!…どうしたん!…何を見たん!…』
友人は、その目で目撃した光景を余す所なく語ってくれた、かなり興奮気味だが…私にはそれが、どんな光景なのか、なんとなく予測できた…。
最初、うっすら人影程度、ハッキリとは断定は出来ない…運転席と助手席の間の空間から、男(恵君)らしき人影を確認するも、嫁らしき人影は隣には無かった…友人は状態を起こし、良く覗き込むと明るいナビ画面に照らされ、下を向いている男の頭と、男に膝枕され、横たわっている妻らしき横顔が確認できた…。
(男が何かを語りかけていた!)
(相槌を打つ妻を見た!)
(男の手が、妻の髪を撫でていた!)
と…興奮しながら見たこと全てを細かに私に伝えてきた…。
(なんてこったい…)
正直、私は足が竦(すく)み、寒さもあり、全身が(ガクガク)と震えだした…喉も渇いていたが、胸のポケットからタバコを取り出し着火する…。
友人
『おぃ!…どーすんだよこれ…早く行かないと、何かしらあるかもよ!おぃ…おぉ~ぃ…聴いてるかぁ?』
放心状態の私…正直なところ、私は何をどうして良いのか解らなかった、頭をよぎった事は…友人に対し、とても恥ずかしい気持ちだけだった…。
私
『あぁ…あっ…すまん!…悪ぃけどさ、もう大丈夫!…ありがとな!…付き合わせて悪かった、後は大丈夫だから…気を付け帰ってくれな!…』
友人
『…大丈夫か?…俺が乗り込もうか?…2人でボコボコにしてもよかぜ!!…なんなんや!アイツとお前の嫁…』
私
『いや…大丈夫…大丈夫…大丈夫…やけん…悪いな付き合わせてさ…』
友人は私に、(何かあったら直ぐに連絡をくれ!、途中、すぐにでも引き返してくるからな!)と諭すように言い残し、静かに…私とタイヤを残して去って行く…きっと友人は帰路途中で待機してくれていたに違いない…。
自分が呼んでおきながら、半ば強制的に友人を帰してしまった事、未だ後悔している…(本当に俺は…失礼な奴だと…)友人よ…すまない…だが…察してくれてありがとうな…。
私は暫く、残されたタイヤの上に座り込み、何か策を考えている…
(落ち着け!…落ち着け、俺…)
そして…思い切って私も様子を伺いに行く事に決めたのだが…なかなか動き出せなかった。
10分は経過しただろうか…ようやく立ち上がり…またタバコに着火した…ふぅぅ~…と、落ち着き…繰り返し吸い込む…ヤニカスにしか解らない、常備薬みたいなものだ、まるでアニメ:ワンピースのサンジのように…。
借りたタイヤを駐車場入り口の、街路樹付近に寝かし、私も身を屈めながら、車両横の街路樹に身を預けながら近寄る…そっと前方から街路樹越しに、左前方部分より覗いた…。
目を凝らして、じっ…と中を確認したがやはり角度が悪い、今度はもう一歩前進して、友人の様に運転席:助手席の間に視線を集中させる…。
(ん?…!!…えっ…!!…あぁっっ…)
友人の言葉どうりだった……。
妻の髪を優しく撫でる恵(ケイ)君と、目をつむり、彼の大きな手を受け入れている妻の姿…まるで付き合い始めたばかりのカップルのようだった…私は嫉妬と興奮を覚えた…。
恵(ケイ君)の手はしだいに髪から、妻のほっぺたや、首筋へと変わり擦ってゆく…その優しく大きな手で…愛撫されるように…妻はウットリとし、抵抗すらなく…彼に身をゆだねている…。
若い男の鍛えた肉体を隣にし、優しく膝の上で介抱される…真面目な妻も気分が高揚したのだろうか…互いの火照った温かい身体…2人の甘い吐息が少しづつ車のウインドウを曇らせてゆく…ガラスの四隅から段々と白く…白く…変化してゆく…あぁ…見えなくなってゆく…あぁ…あぁ…。
-------------------------------------------------づつく
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