月日が流れ由奈は2歳の誕生日を迎えた。
里奈は相変わらず鵜久森の会社に勤めていた。表向きは社長秘書だが
その実愛人契約と変わりは無かった。しかしそれでも里奈は
良き妻であり、良き母親の役割を完璧と言って良いほど
果たしていた。妻の収入もあって生活には不自由しなかった。
ある朝妻のハンドバッグが変わっているのに気が付いた健二は、
そのハンドバッグ最近買ったの? と聞いてみた。里奈は社長の息子
さんが海外旅行に行ったお土産にプレゼントしてくれた物だという。
安物だから気にしなくていい、と言われたのだそうだ。健二にはハンドバッグ
の良し悪しは全く分からなかったが、刻印のハーメスという語の響きには
何処かで聞いたような気がしていた。それで電車での通勤中にスマホで
調べてみると、そのハンドバッグはエルメス製品で100万以上もする
商品だと分かった。健二は電車に揺られながら胸騒ぎがしていた。
きっと鵜久森の息子とも何かあるに違いないと疑い始めたのだった。
その日の夜、健二は再び妻のハンドバッグに新しく買った盗聴器を忍び込ませた。
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