「それとね、まだ分かんないんだけど……」
「何?」
「あたし妊娠してるかも」
「ほ、ほんと?」
「まだ検査してないけど、生理が来ないの。」
「し、調べてみないと………」
「明日検査キット買ってくるね」
「う、うん」
「貴方…」
「え?」
「うれしい?」
「決まってるじゃないか。」
快活にそう答えながらも健二の心は複雑だった。
里奈が身籠っているのなら、果たして自分の子だろうか。
上杉や鵜久森の子ではないと言えるのか。
結婚して4年経ってようやく出来た子が、もしも自分以外の子種だったら。
その事はDNA鑑定すれば簡単に分かるに違いない。
その結果もしも自分の子ではないと分かったら………。
考えているうちに健二は息苦しさを覚え、
呼吸が早くなるのを懸命に我慢していた。
「明日が楽しみだわ。」
という里奈の言葉がSM姿の里奈のイメージと重なって、
拷問の鞭のように健二の心を強く打つのだった。
次の日、健二は仕事に集中出来ず、何度も企画書の文章を手直ししなければ
ならなかった。早々に仕事を切り上げて、高まる緊張感を胸に帰宅すると
里奈が健二の帰りを待っていた。
「どうだった? 妊娠反応??」
「今持ってくるね。」
妊娠反応キットは横の判定見本通り線が一本出れば陽性である。
里奈がトイレから神妙な面持ちで妊娠反応キットを持ってきた。
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