『これは向日葵ですか?』玄関横に二つほど並ぶプランターを指差した。毎年、このプランターには向日葵が咲いている。鮮やかな黄色の大輪が目に留まっていた。『そう、向日葵よ…好きなのよね…向日葵って。』既に腰丈ほど伸びた緑色の茎には大きな花を咲かせるであろう蕾が見えている。『毎年咲いていますよね…向日葵…』毎年、夏になると見られる風物詩である。ただ、暑い日は余計に暑さを感じさせる代物でもあった。『そうね…花が咲くのは八月に入ってからかな。もう少し伸びないとね…』おばさんはプランターの前で向日葵に話し掛ける様に話していた。両膝に手を当ててプランターを覗き込む。薄いピンク色に小さな花がプリントされているスカートだ。身を屈めると見事な臀部が僕の視界に入っていた。『何時も観ているんですよ。おばさんの向日葵…夏って感じですよね。』『そうね…私にとっては向日葵が夏の代名詞かな…』プランターを見渡す度におばさんの臀部は妖しく動いている。(おばさんのお尻って結構大きいんだな) その光景を脳裏に焼き付ける様に眺めていた。『涼介君は、何で夏を感じる?』突然の問い掛けであった。『ぼ、僕ですか?そうだな…やっぱり高校野球かな…』夏を感じる物は人其々である。向日葵で夏を感じる人、夏の甲子園で夏を感じる人…蝉の鳴き声で夏を感じる場合もある。三年生にとって夏の試合は事実上の引退式であった。勝とうが負けようがその日は必ず夏に来る…ただ、その期間の長さだけが違うのである。『それじゃ、涼介君の夏を思いっ切り謳歌しなさい…この向日葵の様に…』プランターの中には二本ずつ、計四本の向日葵が時を待つ様に成長していた。『そうですね…僕もおばさんの向日葵が大好きなんです。負けないようにしないと…』僕の視線は以前としておばさんの臀部に注目している。僕にとってはおばさんの方が向日葵の花である。憧れ…愛おしさを感じていた。『じゃ、僕は帰ります。』『そうね、暗くなってきたものね。お疲れ様!』おばさんは軽く右手を振った。
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