『そろそろ予選会始まるんでしょう?いつからなの?』県予選は7月の中旬から始まる。球児達の一投一打に各応援団は一喜一憂する。勝ったチームは喜びを身体で表現し、敗れ去ったチームは涙で応える…お決まりのパターンである。『来月の中旬ですね。僕は補欠なんで出番が無いと思うんですけど…』いつも配られる背番号は11番である。試合などには出たことすら無かった。ポジションは一塁のコーチャーズボックスである。勝って喜べるか…負けて涙が流れるのだろうか…諦めにも似た虚無感だけが頭を過った。『でも…涼介君、野球好きなんでしょう?レギュラーとか補欠とかそんなに重要かな…好きな事を夢中でやる…それが大切だと思うな。毎日、一生懸命練習している涼介君って素敵だと思うわ。』僕にとっては思いかけない応援メッセージであった。『はい、僕も頑張ります…』肩あたりまでの栗毛色の髪…少しウェーブ掛かったミディアムヘアとでも言うのであろうか何とも優しい笑顔があった。
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