ゆう子「ど~おっ!!」
「似合ってるかしら?」
「どう思う?」
彼女はハスキー掛かったセクシーな声で彼に問う。
康治「・・・・・!!」
彼には言葉が無かった。
否、形容するべき言葉が見つからなかったのだ。
それ程までに彼女のプロポーションと着こなしが見事過ぎたのである。
彼女の着ているボディ・コンシャスは左肩が露出して右肩だけで吊るワンショルダータイプであり、生地は柔らかく肌に密着して身体のラインを強調しているお馴染みのモノである。
裾の丈は膝上30センチはあろうかと云う短かさで、直立したままでも股間が覗けそうな勢いだ。
そして肝心の色だが、レイトンハウスブルーと異名を取った乳白色に淡い青と緑を混ぜ合わせたターコイズブルーと云う蛍光色であり、女の肌をよりセクシーに魅せる。
だが、そのどれをとっても只、彼女を引き立てているに過ぎない。
彼女自身が、それだけ際立って美しい事を証明しているだけである。
ゆう子「なんだぁ・・褒めてくれないんだ・・」
「がっかり・・かな?」
彼女の落ち込む表情を見て彼は呟く。
康治「ゆう子さん・・・」
「美しい・・最高です!!」
ゆう子「別に・・いいのよ・・」
「お世辞なんて・・」
「私、もう、おばさんだし・・」
彼はその言葉を聞いて憤慨し、いきなり立ち上がって彼女の肩を両手で抱いて、諭すように語り始めた。
康治「もっと・・もっと自信を持って下さい!!」
「貴女みたいな綺麗なヒトは・・」
「他には絶対に居ませんからっ!!」
彼女は彼の真剣な眼差しに圧倒される。
だが直ぐにいつものペースに戻って行く。
ゆう子「貴方も魅力的よ!!」
「麻由美の目に狂いは無かったわ!!」
「彼女に感謝しなくちゃね!!」
康治「ゆう子、さん・・」
彼は彼女の顔に唇を近付ける。
康治(雅美・・・ごめんっ!!)
彼の唇が彼女のそれと接触しそうになったその瞬間。
ゆう子「待って!!」
「嫌っ!!」
「離れて!!」
彼女は肩から彼の手を退けて云う。
ゆう子「今、雅美ちゃんの事・・」
「思い出してたでしょ?!!」
彼女は自身の言葉に確信がある訳では無かった。
そして女の本能として大事な操を捧げる相手を試したかった。
要するにカマを掛けたのである。
だが彼の方は狼狽えて仕舞った。
何故ならいきなり心の中の図星を突かれたからである。
彼の目は自然と泳ぎ、心の中を見透かされて彼女への対応が出来なくなった。
康治「そっ、そんな・・」
「私は・・・」
彼は二の句も告げなくなって来た。
完全に八方塞がりの状態である。
二人はゆっくりと離れて、互いに向かい合ったソファーへと座って行く。
彼女は彼を観察し続ける。
この後彼はどう行動するのか。
彼女はそれが知りたかった。
暫くの間、沈黙の時間が過ぎて行く。
今回、その沈黙を破ったのは彼の方であった。
康治「私・・・出直して、来ます・・」
「雅美にちゃんと説明して、それで納得して貰えたならば・・」
「また、伺います」
「本当に、失礼しました」
「謝ります・・ごめんなさい・・」
ゆう子「か、帰っちゃう・・の?・・」
彼女自身も想定外の出来事に狼狽える。
恐らく彼は嘘を吐いてでも自分の身体を欲して来るだろうと高を括っていたのだ。
そして、それはそれで仕様が無い事だと諦める手筈であった。
康治「はい!帰ります・・ごめんなさい・・」
彼は深々と頭を下げて扉まで行って、申し訳なさそうに再度詫びを入れて帰って行った。
後に残されたのは、やる気満々のボディコンを着た”ゆう子“そのものであった。
しかも、こちらの都合で呼び出したのに詫び迄されて仕舞った。
彼女のプライドと立場は、予想を遥かに超えて粉砕されて空中分解した。
ゆう子「いったい?・・今の?・・何だった、の・・」
彼女は理解不能の混乱に陥っていた。
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