落ち着いて将来を見据え始めた雅美と違って、彼女、麻由美の心は燃え盛る炎の様に男を求め始めてしまった。
10年以上に渡って異性との関りを閉ざしていた反動で、必要以上に彼を追い求めて行く。
彼女の人生は、一気に薔薇色の如く光り輝いて来た。
彼との熱い夜を今か今かと待ちわびていた。
彼の方も同年代の女性に対する憧れの様な感情があった。
自分と同じ長さの人生を歩んで来た女性だけが持つ一種、同志の様な感覚であろうか。
その同志と最高の交わりをして、自らの種を宿させてみたい。
そんな変わった趣向なのかもしれない。
麻由美「康治さん?」
「最近、顔つきが変わった様な・・・気がする・・」
彼は数日振りに会った彼女から、唐突に指摘された。
康治「そっ、そうかな?」
彼は最近、雅美との関係を良い意味で見直したばかりであった。
その感情が表情にも表れているのであろうか。
彼は手で顔全体を撫でてみた。
麻由美「私、知ってるよ!」
「雅美との事!」
何と彼女は既に知っていた。
だが、それは当然の事かもしれない。
彼女は雅美の母なのだ。
雅美から相談でも受けたのであろう。
康治「えっ?、えっと、その・・・」
麻由美「別に・・構わないわ!・・」
「元々は、二人の問題だし・・」
康治「ほっ、本当に?・・ですか?」
麻由美「ええ!・・でも・・」
「娘には内緒・・でね!」
彼女はウインクをして来た。
全く彼女ときたら、ミイラ取りがミイラになるとはこの事である。
彼はホッとした。
麻由美「この!・・色男め!!」
彼女は怖い顔で彼に云う。
彼は、そんな彼女が堪らなく愛おしかった。
康治「今夜・・・空いてますか?」
麻由美「あのね!・・・」
「貴方、・・やっと言った!!」
康治「ええ?!!」
「そうなの?!!」
麻由美「そうよ!!」
「何時、誘ってくれるのか・・」
「待ちくたびれちゃった!!」
彼は感動した。
この最高の美熟女の口から、そんな言葉が出て来ようとは思いもしなかったからだ。
彼は彼女に言った。
康治「私、・・本当は断られるんじゃないかと・・ビクビクしてました」
麻由美「あたりまえよ!!」
「これ迄、どれだけ酷い事をされて来たか・・・」
「胸に手を当てて、よく考えてみたら?」
康治「言葉が・・無いです!!」
麻由美「それから貴方・・」
「雅美と話がまとまるまで・・」
「私たちを食い物にしようとしてたでしょ?!!」
康治「そっ、そんな事は・・・」
麻由美「伊達に歳は重ねてないわ!!」
「憶測だけどね!!」
彼女には全てがバレていた。
雅美の事も、彼女自身の事も。
麻由美「もしかして・・図星?」
彼女には頭が上がらなくなってしまった。
女は怖い。
彼は、その時心から、そう思った。
麻由美「それから・・ね?・・」
彼女は急にしおらしくなる。
麻由美「私、まだ50を過ぎたばかりでしょ?」
康治「はっ、はい!」
麻由美「だから・・・その・・」
康治「何です?・・言って下さい!」
麻由美「えっと・・私ね・・」
康治「はい?・・」
麻由美「赤ちゃんが・・欲しくなっちゃった!!」
彼は彼女の口から出て来た言葉の意味が、良く飲み込めなかった。
彼女自身の子供が欲しいと分かって、彼の方が狼狽えてしまった。
彼の種付け願望などは、何処かへ吹っ飛んでしまった。
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