康治「本当にすいませんでした」
「お詫びと云ってはなんですが・・」
彼は、詫びとして明日の夜にディナーを招待したいと云って来た。
彼女は少し迷ったが、彼の誘いに乗る事にした。
娘の事をハッキリとして置きたかったからだ。
彼女は酔いの醒めた彼の車で、一先ず家へと帰って行った。
次の日。
彼女はセクシーなドレスを着て彼を待っていた。
彼は今評判のフレンチレストランに連れて行ってくれると云う。
康治「いや~!お待たせしました!」
「では、行きましょうか!!」
彼はタクシーを止めて彼女を先に乗り込ませる。
彼もスーツを着て来た。
いつもの作業着とは全然印象が違う。
一人の立派な紳士に見えて来た。
康治「此処です!」
彼が車を止めさせたのは、洒落たレストランの前であった。
彼は車から先に降りて、ドアを持って対応してくれる。
その所作の全てが堂に入っていた。
「いらっしゃいませ」
ボーイの導きで奥の方へと進む。
そこには予約席の文字が。
康治「いきなりで・・」
「席が取れて良かったです!」
彼女は感激して仕舞った自分に驚き彼を見る。
嫌悪感しか抱く事の出来なかった彼の行動をである。
そんな高揚した二人のディナーは進んで行く。
麻由美「ええっ?何これ?・・美味しい!!」
康治「でしょ!!」
「これ、評判なんですよ・・ネットで!」
麻由美「・・・プッ!!(笑)」
康治「なっ、何です?・・」
麻由美「貴方・・意外と・・正直者?」
二人のベタなディナーは、尚も進む。
麻由美「ところで・・・」
「この辺で・・貴方の真意を聞かせて貰えます?・・」
彼女はまだ疑ったままだ。
康治「真意・・とは?」
麻由美「またまた~!」
「私だって乙女じゃないのよ!」
「貴方の下心は・・いずこに?・・」
康治「下心なんて・・・あります!!」
麻由美「はっ?!」
康治「男ですから・・」
なるほどと彼女は思った。
だが、彼女も彼から聞かれた。
康治「貴女の方は?」
「私みたいな胡散臭い男に、のこのこ就いて来て・・」
「そっちの方が胡散臭い!」
彼と彼女は目を見合わせて笑った。
互いに下心同士では何も進み様がない。
だが、彼女の方は違っていた。
娘の事が有るにせよ、彼女の心と身体は別の反応をしている。
目では彼の怪しさを追ってはいるが、身体の方はそうでは無かった。
久々に近しくなった男、異性である。
しかも互いの恥部を見てしまった後であった。
否が応でも身体は火照って来る。
彼女は彼の行動を注視している。
康治「私は貴女の亡くなった彼が・・」
「羨ましい・・です!」
麻由美「羨ま、しい?・・」
康治「ええ!貴女の様な美しい女性と結ばれて」
「雅美さんの様な娘まで授かって・・」
「羨まし過ぎです」
麻由美「そっ、そんな・・こと・・」
彼女の心まで、真綿で締め付ける様に、徐々に侵食して行く。
彼の行動と言動は、ここに来て花が開いて仕舞った様にキレ、研ぎ澄まされていた。
麻由美「でも、娘の事は・・別ですから・・ねっ!!」
彼女は敢えて釘を刺した。
女性の防衛本能の様なものであった。
康治「勿論!!」
「彼女とはキチンと話し合いますよ!」
彼と彼女は心が通じて仕舞った。
互いに都合の悪い事は棚に上げて置く。
後は、それらを証明する為に身体を逢わせて行くだけであった。
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