麻由美の心は八方塞がりとなってしまった。
娘の住むマンションの管理人である康治に云われた言葉を頭の中で繰り返す。
麻由美(まさか? 本当に?)
(何故、あの子の方から・・・)
彼女には彼の言葉が嘘か真かなどと云う判別は出来ようも無い。
彼女が分かっている事は唯一つ、二人で楽しそうに泳いでいる娘の姿だけであった。
彼女は迷った。
このまま此処から逃げ出して仕舞っていいものか。
彼との接点が無くなって仕舞えば、後は娘の考え方一つとなってしまう。
母として、それだけは出来なかった。
康治「どうしましたか?」
「このまま、此処に残るとでも?」
彼の言葉は悪魔の囁きの様に聞こえて来る。
彼女は思いあぐねて彼に聞いてしまう。
麻由美「一体、どうすればいいの?」
「貴方の望みは?・・何?!・・」
康治「そんな・・望みだなんて・・」
「私が貴女を脅迫している様に聞こえます」
麻由美「脅迫してるも同然じゃないの!!」
彼女は、キッと彼を睨み付けながら云う。
その様子を見て彼が笑った。
康治「プッ!・・ふふっ!」
麻由美「なっ!何が可笑しいのよ!!」
彼女は自分を馬鹿にされた様に感じた。
康治「いや、あの、・・違います!」
麻由美「何が違うの?!!」
康治「ホント、似てるな~って」
麻由美「誰と?!!」
康治「雅美さんと・・怒っている口元がねっ!」
彼女は顔を真っ赤にして訴える。
麻由美「親子だもんっ!」
「しょうがないでしょ!!」
康治「その顔!!」
「雅美さんと一緒で・・」
「最高に可愛いです!!」
彼女は異性から可愛いと云われて酷く困惑した。
美しさを褒めて来るお世辞には慣れていたが、可愛らしさに関しては免疫が無い。
彼女には、可愛いの意味が分からなかった。
麻由美「かっ、可愛いって!!」
「何処からそんな言葉が出て来るのよ!!」
意味も分からず褒められた事で、彼女の言葉も混乱している。
そもそもは、彼と娘との間での話であった筈だ。
彼は巧妙に話の展開を誘導して行く。
康治「可愛いものは可愛い!!」
「私は、その点では嘘をつきません!」
では、他では嘘をついているのか。
余裕の無い彼女に、そんな突っ込みを期待出来る筈も無かった。
彼女は只々うろたえていた。
麻由美「貴方!!」
「真面目に話をしているつもりなの?!!」
「その格好で!!」
彼はズボンとパンツだけを脱いで下半身を剥き出しにしている。
更に、その露わになったペニスは痛そうな程に勃起しているのだ。
話に説得力など在る筈も無い。
だが、長い間清い身体で居た彼女にとって、その光景は刺激が強すぎた。
しかも、明るい場所で凛々しく起ち上がる異性の性器を目の当たりにする事等は彼女の人生に於いて初めての経験となる。
彼女は彼と議論を闘わせながらも、チラチラと彼のペニスをチラ見している。
彼が、その視線を見逃す筈は無かった。
彼は彼女を更に追いこんで行く。
康治「私は真剣ですよ!!」
「ほらっ!」
彼はペニスを、くいくいっと2回跳ね上げて見せた。
彼女はそれを見て仕舞って、手で顔を隠す。
麻由美「もうっ!! いい加減にして!!」
JKの制服姿の彼女は、そうは言いながらも指の間から更にチラ見をして行く。
彼女の視線は、亀頭から溢れるカウパー液に釘付けになっていた。
彼もその視線を感じて、更なる行動に出る。
康治「こんなの・・どうですか?」
彼は亀頭の粘液を指で掬い取って、ツウゥーっと上に伸ばして糸を引いて行く。
麻由美「やめて!!」
「そんなこと・・しないで・・」
止めてという事は、しっかりと見ていると云う事である。
彼は、そろそろ頃合いだと思った。
話を一気に畳み込んで行く。
康治「麻由美さん!」
「彼が亡くなられてもう、何年ですか?・・」
「もう・・いいでしょう・・」
「貴女は充分に頑張って来た・・」
彼の話は、対決から共感に変化した。
麻由美「貴方に・・あなたに何が・・」
「・・なにが分かるっていうの!!」
彼女は彼の急な方向転換に就いて行くのが精一杯である。
康治「ああ!そうだよな・・」
「人の事なんて・・」
「分かる訳無いよね・・」
彼女は顔から手を離して彼の言葉を聞く。
彼は後ずさりして、ソファーに座って仕舞う。
彼のペニスも心なしか、うな垂れ気味である。
そのペニスの意気消沈振りに、彼女の心も、うな垂れて来た。
康治「私だって・・」
「いくら雅美さんから云われたからって・・」
「こんな事・・したくは無かった・・」
彼の姿は本心の様でも芝居掛かって居る様でもある。
彼女は彼を観察して行く。
康治「本当は・・貴女の様な人と・・」
「エッチがしたかったのに・・」
麻由美(はああぁ~~???)
彼女は心の中で、そう叫んだ。
彼のやっている事、言っている事の全てが胡散臭さかった。
康治「あの・・失礼しました・・」
彼は、そう言ってパンツとズボンを履き始めた。
麻由美(ええっ?なに?・・履いちゃうの?・・)
彼女は、あっけに取られた。
彼は私と云う女を目の前にして、すごすごと撤退を始めている。
彼女は自分の魅力を軽く見られた様で、少し腹が立った。
麻由美「あの・・もう、いいんですか?・・」
彼女は彼に聞く。
康治「えっ?・・いいって?」
麻由美「ですから・・その・・あの・・」
康治「ああ!雅美さんの事!」
「私、・・・諦めます!」
「彼女に云って置いてください・・そう云ってたって・・」
麻由美「あ、いや、そうじゃなくて・・」
康治「はい?・・」
麻由美「えっと・・その・・」
「・・え~、わたし、の・・事は?」
康治「麻由美さんの?・・」
麻由美「そう!!私の事!」
康治「頑張って・・下さい・・」
麻由美(何を頑張れって言うの!!)
「あ、いや、そうじゃなくて・・」
康治「本当に・・ごめんなさい・・」
彼は本当に済まなさそうにしている。
彼女は更に更に分からなくなって仕舞った。
雅美の事と云い、まだ何一つ解決した訳では無かった。
彼女は途方に暮れた。
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