雅美「えっ? なに? また・・来た?・・」
雅美のスマホには毎日の様に男からのメールが届く。
彼女が何時、何処で何をしていたかを過去に遡って克明に伝えて来る。
彼女が知らない内に、直近の行動パターンの多くを彼に監視されていた。
その事実に想いを巡らせて戦慄を覚える。
麻由美「雅美・・どうしたの?」
「一体、何が有ったの?」
考えあぐねた彼女は、一先ず夫が居ない間だけでも母親に寄り添って貰う事にした。
だが、事の真相を母親には伝えられなかった。
仕方が無い話である。
赤の他人の精液を自らの胎内に受け容れてしまった事など、打ち明けられる筈も無かった。
彼女は“不審人物に見張られている様な気がする”とだけ母親に伝えていた。
麻由美「全く、何にも云わないで・・この子は・・」
母もお手上げであった。
そして彼女なりに考えて、然るべき処へ相談を持ち掛けようとすると雅美が反応した。
雅美「お母さん!」
「お願い!」
「それだけはやめて!!」
等と止められてしまった。
母は只、静観するしか手立てが無かった。
雅美の母は50代半ばの、女盛りも峠を超え掛けた美しい女性であった。
顔の造形は丸顔気味の雅美と比べ、うりざね顔で古風な印象を持つ。
女優の若村麻〇美を、更に柔らかな雰囲気にした感じである。
彼女は夫と死別して、今は自宅で一人暮らしをしていた。
麻由美「あら!もうこんな時間?!」
「・・う~ん・・」
「じゃあ、そろそろ私は帰るからね!」
「戸締りは、キチンとする様にね!」
雅美「うんっ!分かった・・」
「今日は来てくれてありがとう!」
彼女は雅美に、そう言い残して帰って行った。
雅美は夫が帰って来るまで、また独りぼっちになった。
独りの時間が続くと、視線が勝手にスマホへと移って行く。
テーブルの上に置いてあるスマホには、男からのメールが溜まりに溜まっていた。
彼女は怖いもの見たさの心境から、震える手でスマホを持ち、たどたどしい指遣いで操作をして行く。
すると新しく届いたメールには、スポーツクラブへの誘いが書いてあった。
男(雅美さん、今月の〇日はスケジュールを空けて置いて下さいね!)
(今から楽しみにしています)
彼女は母へ、〇日に出掛ける用が出来たので来訪は無用とメールを打った。
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