熟事務員 Ⅱ ⑱
まあ ビックリした。
帰ってこないと思っていた しずちゃんが帰ってきて、しかも俺に話があると言う、何とか やりすごそうとカマをかけたつもりが図星だったとは思わなかった。
もっとビックリしたのは この状況。
3人で寝るのは幾らか期待もしていたが、4人で寝る事になるとは。近頃の若い娘はサッパリ解らん。
結局 布団の継ぎ目で朱美さんと悦ちゃんの間で寝ることになった。
どちらかが寝返りを打つ度に掛け布団を取られる。
取られては取り返す。取り返しては 頭の後ろで手を組んで天井をボーッと見上げて、『さて どうしたもんか?』と、あーだ こーだと考える。
そんな事を繰り返していた。
悦子
「…寝られない?」
俺
「なんだかね。」
「しずちゃんの布団に潜り込むタイミングが分からなくて。」
悦子
「でた!、工藤節。」
「そんな事 出来ないくせに。」
「…何時?」
俺は枕元のスマホをで確認した。
「そろそろ4:00になるよ。」
悦子
「お風呂でも行こうか?」
「入れるんだよね?」
俺
「…たぶん。」
「行ってみますか?」
宴会場と同じ2Fにある大浴場におりた。
エレベーターを待ってるあいだでも 中でも、お尻を撫でたりしていたのに、いやに反応があっさりそている。
廊下や各所に設置されたカメラが気になるのだと言う。
悦子
「俊くん鍵持ってるのよね?」
俺
「結局 しずちゃんには渡さなかったからね。」
悦子
「どうしよう?。何処で待ってれば良い?」
俺
「俺のが早いんだろうから、宴会場の前の喫煙所にいるよ。」
悦子
「そう。ありがとう。」
「じゃぁ、また あとでね。」
と、大浴場の入り口でわかれた。
そそくさと頭と身体を洗い、頭にタオルを乗せて 湯船に浸かった。
寝不足も手伝って ボーッとする頭で 結局また『どうしたもんか?』と悩んでいた。
これといった妙案も浮かばず、風呂からあがって、洗面台のあたりをウロチョロしていると、5:00近かっただろうか?、板東がやってきた。
俺
「おはよ。」
「パートさんたち どうした?」
板東
「1:00頃だったかな?、部屋にかえったよ。」
「お前こそ しずちゃん どうした?。探してたぞ。」
俺
「悦ちゃん達の部屋で寝てるよ。」
「お前の事だったよ、話しってのは。」
板東
「俺が なんだって?」
俺
「惚れちゃったんだと、お前に。」
「悦ちゃん達が、当たって砕けちゃえ!、ってさ。」
板東
「なんだ、そりゃ?」
俺
「まぁ、明日になれば解るって。」
「明日っても、今日だけどな。」
「んじゃ。お先。」
板東
「おいおい。なんだそれ?」
俺
「話しくらいは聞いてやってくれ。ってこと。」
「よろしくぅ。」
喫煙所で煙草を吸って悦ちゃんを待った。
板東には あぁ言ったものの、何かが 吹っ切れなかった。
中途半端に しゃしゃり出てしまった事を後悔していた。
そんな事を考えてると、『おまたせ。」と悦ちゃんが来た。
悦子
「どうする?、このあと。」
俺
「部屋帰って着替えて、すぐに降りてくるよ。」
「何か中途半端な事してんじゃねぇか?。って。」
「風呂で板東に会ったんだけど、なんだかね。」
悦子
「何だって?、板東さん。」
俺
「話しだけでも聞いて、きちんと返事してやってくれ。って…。」
悦子
「そうね。」
「良いんじゃないの?、しずちゃんに頼まれた事をしてあげただけなんだから。」
「後の事は当人同士で。」
そんな話しをしながら部屋にもどった。
大広間での朝食は それぞれバラバラだった。
俺と板東と長老とが1つのテーブル、ひとつ飛ばして 朱美さん 悦ちゃん しずちゃん と、例のパートさんの5人。
身支度をしてロビーに降りた。
受付で冷蔵庫の精算をする者、お土産屋さんで買い物をする者、ラウンジで珈琲を飲む者、様々だった。
俺と板東は一足先にバスの座席に凭れていた。
2人とも 既にウトウトしていた。
悦子
「俊くん。飲む?」
どうやら ラウンジで珈琲をテイクアウトしてきたらしい。
通路を挟んで、朱美さんが同じように板東にすすめていた。
発車時刻、ガイドさんから案内があり、朝市に向けてバスが発車した。
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