熟事務員 Ⅱ ⑪
俺は 前から3列目、通路を挟んだ反対側に板東さん、2人掛けのところに 其々 1人で座った。
最後尾のサロン部分には お偉いさん達が陣取る。
乗り合わせた女性陣が コンパニオン代わりを させられるのが例年の習わしだった。
今年は 朱美さん悦ちゃんに加えて 現場に出ている彼女達とも気の合う準社員とかパートのオバサンとか(と言っても皆40前後らしいが)が4人位いた。
まず 仕切り役の人から 一言あって、つづいて副社長から挨拶があった。
副社長といっても親会社でナンか やらかして、肩を叩かれてトバばされて来た人で、副社長というポストも この人の為に わざわざ用意したらしい。
そんな人の挨拶なんぞ 誰も聞ちゃいない。
後ろの方で ゴノゴノとした話し声が聞こえた。
つづいて、ガイドさんから 日程やら 行程やら 運転手さんの紹介やら 自己紹介やら が有った。
社長 副社長 専務 工場長と、半日ごとに各バスを回ってくる。朝から1番嫌な奴が来た。
その副社長から、最初のトイレ休憩の時に
「おい工藤」と声をかけられた。
「最近 目に余るぞ。」
(何かと俺を 目の敵にしている。と言うより 彼の矛先は どぅも晴男さんらしい。2人の間に何か有ったらしいが詳しい事は晴男も言いたがらない。)
俺
「すみません。何の事でしょう?」
副社長
「誰彼かまわずに 噛みつくし。星野さんや稲葉さんだって…。」
俺
「すみません、お話が良く理解出来ませんが…。」
「まだまだ半人前なもんで、副社長が目をかけてらっしゃる 大島さんを見習わせて頂いてるところでして…。」
副社長
「だから。お前の そぅいう所だよ!」
俺
「ですから、半人前なもんですから ハッキリ言って頂かないと。大島さんがお手本では 何か ご都合の悪いことでも…?」
そんなやり取りをしていると 後のほうから
「俊く~ん。」
と、悦ちゃんの声がした。
副社長
「もぉいいよ。」
と、先にバスに乗り込んだ。
悦子
「副社長、なんだって?。何か言われてた?」
俺
「特には。(風邪)大丈夫か? って。」
昇降口で頭を下げるガイドさんに 会釈しながらバスに乗った。
再びバスが走りだした。
まだ 朝の7時前だというのに 車内では カラオケ大会が始まった。
ビールに酎ハイにカラオケ、度を越した 酔っ払い達が 何度も何度も バスをとめる。
予定以上のトイレ休憩をとるはめになった。
能登の 昼食どころ に到着したのは、予定より45分もおした12:30だった。
当然 観光などは スッ飛ばして 食べるだけ での出発となってしまった。
昼食後は副社長と入れ替わりに 社長が乗車してきた。
バスが走りだす前から 仕切り役から紹介が有り、社長の挨拶となった。
「こんな ギュウギュウの行程で申し訳ありません。
出来れば いま少し ご協力頂けると、大変有難いです」みたいな挨拶が有り、後方のサロンに向かく時には シートに掴まりながら 右に左に頭を下げながら 向かって行った。
ガイドさんからの、次の輪島塗の説明やら何やら、お決まりの お話が終ると、女性陣が数名 前の方にやってきた。
悦ちゃんが俺の隣に、朱美さんが板東さんの隣に、パートのおばちゃん2人が 2列目に置いていたクーラーBOXをどかして、左右に別れて座った。
俺が不思議そうに見ると
悦子
「社長がね、いいって。」
「『朝も早かった事だし、ずっと私達の相手をさせられたんでは、ひとつも 休まらない でしょう?、前 空いてる様ですから 移ってやすんでたら?』って、どぉしちゃったんだろ?今年は、こんな事はじめてよ。ねぇ朱美ちゃん?」
俺
「言葉どおりなんじゃないっすか?」
「自分も眠いんすよ きっと。」
「(大島さんたちに)皆 朝早かったんだから静かにしてやれ って牽制したんじゃないっすか?」
悦子
「そぅかしらぁ?」
「ねぇ、朱美ちゃん?」
「て!、もう寝てんかい?」
朱美
「ゴメン。なんだか お腹も一杯だし ホッとしちゃってぇ。」
「そうよねぇ。やんなくて良いって社長が言うんだから 良いのよ。」
「ねぇぇ。」
と、前の席に座ったパートさん達の声がした。
朱美 悦子
「それも そうね!、寝よっか?」
「次まで 少し(時間)かかるみたいだし。」
と、すぐに 皆 寝息をたてだした。
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