熟事務員 Ⅱ ⑥
悦子
「ねぇねぇ、俊くん。来月になったらさ、TO◎◎TA付き合ってくんないかなぁ?。」
俺
「(車)買い換えるんすか?。」
悦子
「うん。今のは奴(ご主人)の名義だしさ、ハイブリッドって割には燃比もそんなに良くないし、図体ばっかデカくて大食いなのよ!。雪降ったら走れないし、3年だか前に大雪降ったでしょ?。奴(ご主人)が出てっちゃダメだって!。自分で私の乗って 女のトコ行っちゃったクセしてさ。」
「何より、もう ヨッコイショッなんて言いながら 乗り降りしてらんないわよ。」
「来年 車検だしさ。」
「俊くんの 乗り降り楽じゃない?。TO◎◎TAで俊くんのの少し小さい様なやつ 出すんだって?。こないだTO◎◎TAの人が来てカタログだか何だか 置いてったのよ。先行予約が どぉとかって。」
俺
「あぁ、C◎HRとか何とかいうヤツっすか?。楽しそうっすよね、あれ。」
「4WDで1200のターボ が有るとか?って雑誌に。」
悦子
「いくら位するんだろ?。」
俺
「グレードにもよるんでしょうけどね。」
「ザックリと350とかじゃないっすかね?。」
悦子
「今のを下取りとかだしても?。」
俺
「LSか何かでしたよね?。来年って5年目って事っすか?。」
悦子
「車は良く分からないけど、車検はそうね、1回出してるから。」
俺
「だったら200は いくと思いますよ、走行距離とかにもよりますけど、残りが100とか150とかじゃないっすか?。でも ご主人のなんすよね?。」
悦子
「もう私のよ!。(下取りの)了解は取ってあるから。」
朱美
「今の車って そんなに するんだぁ?。やっぱり私は軽ね。」
俺
「あのぉ、朱美さん?、今時の軽自動車 侮っちゃいけませんよ。ウチ(妻)のなんて いくらしたと思いますぅ?。」
朱美
「120とか130とかぁ?。」
俺
「アレ あれでも200越えてます。」
朱美
「今の軽ってそんなに するのォ?。」
俺
「まぁ、4WDのターボに 何とかコーティング ナビ ETC バックモニター ドラレコ 何ちゃらブレーキ、そんなの付けると そのくらい すぐ行っちゃうんすよ。」
「1000CC位のコンパクトcarのが安い位ですから。」
「今は 安全安心何とか付きの 車体だけで198の軽とか 普通に有りますから。」
朱美
「そうなのォ。」
「アレ(妻の)は?、ローンとか?。」
俺
「実はアレ 晴男さんが買ってくれたんです。」
「アレも俺のも 会社に来てる MA◎DA から買ったんすけど。はじめは 俺が今のCX◎5欲しくて。」
「で、アレ(妻の) 買い換える時に 3台目なら安くなるだろうって 晴男さんも買い換えるって言い出して。もっとも晴男さんは 安全ブレーキとかの安全安心装備が欲しかった みたいなんすけど。」
「妻は 2台買っても クラウンの最上級よりも安いし、下取り車も有るから、って まとめてローン組む つもりだった みたいですけど。晴男さんが『もう歳だから 遠出はしない。だから四駆もターボもナビも要らん。安全装備だけ有れば良い。どっか行かなきゃならん時には どっちかが足になってくれ!。それなら俺が(お金)出してやる。』って言ってくれて。」
「で、お願いして。」
悦子
「でも、現金だと 高くなるって言わない?。」
俺
「なので。納車まで1ヶ月位かかるので、まずはローンで契約を済ませて、2週間位したら『車検証が出来上がる前に教えて下さい。』って念を押してお願いして、その連絡が来たら『お金の準備が出来たので一括でお支払いしたい。連絡はローン会社にすればいいですか?。』って伝える。『1回は引き落としで。でないと契約に反する。』みたいな事言ってくる所もあるけど『それだと車検証の名義を変える時に また お手を煩わせてしまいませんか?。』って言うと、たいがいのローン会社は 何年もローンを組んで 中には滞る人も居るなかで 今確実に(お金)入ってくる方を選ぶ、みたいですね。それで何とかなりました。ま、あくまで、車屋さん ローン会社さん次第なんでしょうけど。」
「で、2台合わせた値段が390位だったのを、下取り分と値引き分引いてもらって、250払ったんだと思います。なにせ晴男さんのはボロボロだったんで。」
朱美
「奥さんのは何ていう車?。」
俺
「スペ◎シアって分かりますか?、SU◎◎KIの。」
「中身はあれです。マークはMA◎DAマークですけど。」
「ちなみに晴男さんのも それなんですけどね。」
朱美
「私 あまり車は見分けつかないのよ。」
「真理ちゃんが乗ってるヤツ?。」
俺
「あれは たしか NB◎Xだったかと。」
朱美
「アレ、何度か乗せて貰ったけど、乗り降りしやすいわよね、中も広いし。あぁいうのなの?。」
俺
「まあ、そうですね。形はあんな形です。」
「ウチは2人とも アンチHO◎DAなんで眼中に無かったですけど。」
朱美
「あれ(NB◎X)も やっぱり200万とかなの?。」
俺
「同じ位のグレードだとしても だぶん価格自体が アッチのが高いです。まして この時季 スタッドレスも一緒に なんて言ったら 250はかるく。あとは 付けるオプションと下取り車と値引き次第ですけど。」
朱美
「やっぱり 諦めるしかないかぁ。」
悦子
「でも、あれよ、今の新車って お金掛からないわよ。
半年に1回TO◎◎TA行ってれば、全部やってくれるし、1回目の車検だって取り換えるものなんて何も無いし、何の心配も無く 黙って5年は乗れるわよ。」
そんな車談義をしていると、チャイムが鳴った。
悦子
「あら、早かったわね。」
「ハァイ、どうぞぉ。」
「朱美ちゃん、皿とか お醤油とかお願い。」
「アッチ(テレビの有る方)のが良いわよね?。お願いね。」
「俊くん、(運ぶの)手伝って。」
星野さんが お金を払って。
お寿司屋さんは 寿司桶を入れて運んできた 入れ物ごと置いて帰った。
星野さんは、その入れ物を両手で持って 起き上がった俺の頬を両手で押さえて 頭をかしげながらキスしてきて、
「さっき(朱美ちゃんと)こんな事してたでしょ?。」
「もお!、新幹線でも朱美ちゃん ばっかり!。」
「ばぁーか。」
と言って、俺を置き去りにして いってしまった。
悦子
「(皿とか)分かったぁ?。」
朱美
「うん、大丈夫。それより これ どうしたの?。」
と、声がしていた。
見ると、以前 有った 応接セットが無くなり、代わりに 前に NIT◎RIがコマーシャルしてた様なソファと小ぶりなテーブルがテレビの正面にあった。
悦子
「奴に買わせたのよ!。」
「今時 あんな応接セット 流行らないしさ、これなら私が ここ出る時に持って出るからって。」
「ディ◎スだったかな?、最近届いたのよ。」
「ハイ、どうぞぉ、座ってぇ。」
まんま、新幹線の配置となった。
悦子
「乾杯はいっかぁ、さっき したから。食べよ。」
朱美
「頂きまぁす。」
「でも、ゴメンね。今日は(お金)一杯(使わせて)。」
悦子
「そんなの いいから。食べて。」
食べながら 買ってきた袋を2人で開けはじめた。
食べながら 一通り見る終わると、「あっ、そうそう。」
と言って星野さんが立ち上がって 何処かに行った。
戻ってくると 手に小さな袋を持っていた。
悦子
「はい、これ、朱美ちゃんの。」
口紅の様だった。
確かに化粧品屋さんも見ていた。
朱美
「待って、お金。」
悦子
「そんなの いいわ。」
朱美
「だって、悪いわ、これ(口紅)までなんて。」
悦子
「だって、あげる んじゃないもの。時々 返してもらうから。」
朱美
「???。」
俺
「あれ?、それって 何かの映画の台詞じゃなかった でしたっけ?。ハンフリー何とか?、カサブランカ? とかでしたっけ?。」
朱美
「(ますます)???。」
の ようだった。
そんな稲葉さんの頬を ついさっき 俺にした様に 両手で押さえて 覆い被さった。
「チョッ、チョッとぉ、なに?。」
そう言って困惑している 稲葉さんの唇を
「返してもらうの。こうやって。」
と言いながら 星野さんの唇が 塞いだ。
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