待ち合わせは、スーパーの駐車場でした。自分の乗用車から降りた浅井さんは、すぐに僕の軽四の助手席側のの扉を開きました。
顔を覗くようにして、『大丈夫?泣いてたから。』と僕を心配してくれます。そのまま乗り込むと、『出よ。』と車の発進を促されました。
車が走り始めると、『どうしたのぉ~。心配するじゃないの。』と母親のような口調でした。その流れの中、僕は気持ちを全てを話したのです。
女性が苦手なこと、女性から逃げてたこと、付き合ったこともないこと、経験がないこと、そして浅井さんを好きになったこと、悩んだこと、全てです。
『ツラかった?』と電話の告白した時の心境を聞かれました。『ツラくないです。浅井さん好きですから。』と意地を張ると、自分の唇が震えていました。
すすり泣こうとしてしまう自分を押さえるのに必死でした。涙が溢れようとするのをガマンするのに必死でした。
それでもどうにもならず、口は『シュンシュン…』といい始め、涙は拭いても左右から溢れました。
『車、止めて。』、危険と判断したのか、浅井さんは僕にそう告げます。涙が止まらないので、路肩に車を止めるのも大変でした。
瞬間でした。僕のシートベルトが彼女の手で外されました。そして、彼女も自分のシートベルトを外しています。『降りるのか?』と思いました。
違いました。見えたのは、彼女の手でした。それを辿ると、小さくですが僕に両手を広げていました。『こっち来て。』と言われ、身体を傾けます。
初めて女性に抱き締められました。情けないですが、母親に抱かれるようにしがみついていました。
温かい、柔らかい、女性の身体を初めて感じました。しがみついた僕の手は、彼女の脇のあたりで止まっていました。手の甲が僅かに乳房に触れています。
初めて触れた女性の乳房。その僅かな感覚は『とても柔らかい。』と感じとっていました。
僕の頭に彼女の手が回され、更に強く抱き締められます。僕の身体は更に沈み込み、僕の頭の上に彼女を感じました。深く抱き締めてくれているようです。
顔の前が苦しくなった僕は、彼女の身体に両腕を回します。彼女は抱き締められやすいように、身体を前に出して止まってくれました。
思っていたよりも、とても細い身体でした。抱き締めたことで、その細さが分かりました。
『泣いた子供を慰めよう。』、きっとそのつもりで抱き締めてくれたと思います。僕も彼女の胸に飛び込んだ時、それは同じ気持ちでした。
しかし時間が経つに連れて、少しずつ違うものになって行くのです。
僕の頭の上から顔を埋めていた浅井さん。しかし、僕の頭が上がり始めたため、彼女は避けることを余儀なくします。
僕の両手はしっかりと細い彼女の身体を抱き締めて、それを感じていました。頭が上がると、視線に見えてきたのは、彼女の肩から首筋でした。
そこに顔を埋めるのです。この体勢では、浅井さんも同じ体勢をとるしかありませんでした。ここから、僕も彼女も驚くのです。
僕は明らかに自分の唇を尖らせて、彼女の首筋にあてているのです。くすぐったいのか、気持ちがいいのか、彼女は首を締め始めます。
僕は冷静でした。しかし、身体がおかしいのです。彼女の首筋にキスを繰り返してしまうのです。彼女の手が僕の身体を押しました。
しかし、捕まえたその細い身体を離そうとはしません。『イヤッ…、やめてぇ…。』と彼女が言いました。そこで気づきました。
こんな僕でも、ちゃんと愛撫をしているのです。
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