初めてのキスは、想像とは違っていました。見えるのは鼻から頬に掛けて。彼女の顔全体など見渡せるものではありません。
柔らかい唇でした。その唇はモグモグと動いて僕の唇を求めてくれていました。彼女の香りを感じ、それはやはり大人の女性の香りがします。
求めて来てくれる浅井さんに、『ちゃんと答えてたい。やり方は合っているのか?』とそんなことばかり考えて、唇を重ねてしました。
彼女の手は僕の後頭部に廻っていました。僕も同じように彼女の後頭部に手を掛けた時、彼女の唇が離れました。
一息つきながら、彼女は助手席に戻りました。『一仕事したぁ~。』って感じが伝わって来ます。僕も『やっちまったよ、俺』と現実を直視するのです。
そして、『私とお付き合いしてもらえますか?』と言われました。もちろん、『はい!』と答えます。
それからがまた大変でした。デートを重ねていき、ある時から別れ際にキスをするようになったのです。
しかしそれは、浅井さんとの身体の関係が近いことも意味していました。
この頃、普段観ていたAVの好みも変わって行きましした。熟女でも、ほぼ40歳くらい、肌の色も少し黒めのやせ形の女優を限定して観るようになっていました。
意識はしていたと思います。つまりは、浅井さんを探していたのです。
『こんな感じか?』『こんなことをすれば、浅井さんもこうなるのか?』とバイブルのように観てしまいます。
射精する頃には、その女優さんはもう浅井さん本人なのです。終わった後も、『気持ちよかったかなぁ?』などと愚かに思うのでした。
その日、出掛ける時に母がニヤっと笑いました。最近、着る服も生活の習慣も変わった僕を見て、思わず笑ったのです。
髪型を気にし始め、歯を磨き、おまけに口の中も口臭剤で洗うようになっていました。そんな僕に、母が近寄って来ます。
『これ。』と渡されたのは香水でした。もちろん、一度もつけたことなどありません。『いいよ、クサいし。』と断りました。
しかし、『こうするんよ。』と香水を手首につけられ、擦り付けさせられました。つけたこともない香水に違和感を感じながらも、デートに向かうのでした。
付き合いは1ヶ月半を越え、デートは10回をはるかに越えていました。その頃になると、本当の浅井さんという人間も見えて来ます。
妹達の母親代りをしていただけあって、少し厳しい面はあります。そんな時には、彼女に母の姿を見る時もあります。
妹さん達のことを語るとき、やはりそういう口調になるのです。しかし、浅井さんの妹です。美人三姉妹ではないでしょうか?
逆に甘えるようにすることもありますが、きっとそれは慣れてないのだと思います。彼女のイメージにあまりないから、僕にはそう思えるのかも知れません。
それでも基本はお姉さんです。いや、浅井さんには申し訳ありませんが、『おばさん。』って思うこともあります。
それでもなんとか、『二人がうまくいくように。』とお互いには思っているのです。
その日も、日が落ちた頃、僕と浅井さんは車内で唇を重ね始めました。二人がキスをするのは、決まって車の中でした。
しかし、この日の浅井さんは違いました。少し積極的で、長いキスは終わろうとしません。彼女には、圧力を感じました。
そんな中、僕の胸元に彼女の手を感じたのです。『えっ?』とすら思いました。僕の胸に触るなど、これまでになかったことでした。
細い指先が、僕の左の乳首あたりを触っているのです。更に彼女は狭い車内で、左足をチェンジレバーの辺りに乗せあげ、更に僕に圧力を掛けて来ました。
『今日は違う。』、とそれは僕にも分かります。瞬間でした。彼女の口の中から舌が出てきて、僕の口の中に押し入り始めたのです。
いつものように後頭部を持たれ、『ウッ…ウッ…』と迫られました。頭での判断はありませんでした。僕の舌もすぐに出ていき、彼女の舌と絡んでいました。
『イヤらしいキスをしている…。』、子供のような表現ですが、実際ほんとうにそう思ってしまいました。
僕の後頭部を持っていた、浅井さんの力が緩みました。おかげで、彼女から掛けられていた圧力も緩みます。
僕は押し返すようにすると、浅井さんが仕組んだのか、自然にそうなったのか、完全に僕が上から顔を被せるようになったのです。
体勢の悪くなった彼女は、僕の身体に手を廻します。彼女の顔は上を向き、僕の圧力を感じながら、キスを受け止めるのでした。
彼女に僅かな抵抗を感じました。『もう、このくらいにしよう?』とそんな感覚です。しかし、キスの魔力とでも言いましょうか、僕をその気にさせません。
年上の浅井さんを、初めて弱々しく感じていました。小さく華奢な彼女そのものです。自分が大きく、女がとても小さく感じます。
その時、これも意思ではありません。僕にも男の本能がちゃんとあったんです。彼女のコートを押しのけた僕の右手は、彼女の左の乳房を揉み始めるのでした。
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