熟事務員 ⑤
イオン~湯の郷◎◎までは、40分といったところだろうか。
稲葉さんの右足の上で 前後に動かしていたてを、
足の付け根あたりで、外側~内側へと、左右に動かしてみた。
内側に爪をたてたりしながら、何度か往復させていたが
朱美
「ダ~メ。これ以上は。」
と、左手を俺の手の下に入れて、上下から挟みこむ様に握った。
その両手を自分の太ももに、トントンと上下させている。
俺
「あのバッグには何が入ってるん?」
朱美
「あぁ、あれ?。お風呂セット。」
「シャンプーとかコンディショナーとか着替えとか」
俺
「え?、下着もはいってんの?」
と、言いながら、稲葉さんの手をほどき、バッグに手を伸ばした。
朱美
「ダメよ。危ないでしょ。」
と、また両手で俺の手を握った。
俺
「準備万端なんだ?」
「計画的犯行 ってやつ?」
朱美
「犯行はヒドイわ。計画的では有るけど(笑)」
「でも、工藤さんに着替えもってきて って言うのもへんかなぁ? と思って」
俺
「だよねぇ、俺 何ももってないもん」
朱美
「パンツ、プレゼントさせて頂きますワ(笑)」
そんな、やり取りのなか 湯の郷◎◎についた。
俺も何度か来たことはあった。
下足入れの番号札が そのままロッカーの番号になる。
稲葉さんは俺の番号札を受け取ると、受付に向かって、手際良く 受付をすませて 戻ってきた。
朱美
「工藤さん、こっち」
と、俺の手を引いて歩きだした。
広いロビーの一角に、パンツやTシャツ、婦人物の洋服まで売っている所があった。
24時間営業で仮眠スペースも有るので、出張のサラリーマンなんかも利用しているだけの事は有ると、感心していた。
俺の胸にTシャツをあわせ、ベルトの辺りに 袋に入ったままのパンツをあわせ
朱美
「こんなもんかな?。待ってて」
と、ロッカーKEYを見せ、Tシャツとパンツを袋に入れてもらって帰ってきた。
朱美
「はい、プレゼント。私の好みだけど」
俺
「(あっけに取られて)はい、ありがとう」
ここは 全てロッカーNOでの、後精算である。
朱美
「どうしよう?、30分後に ここで‥」
「長くない?、大丈夫?」
俺
「大丈夫ですよ」
朱美
「じゃぁ、そういう事で。」
「また、あとでねぇ。」
と、女湯に消えた。
風呂から出て、館内着で稲葉さんをまった。
程なくして 稲葉さんが
「おまたせぇ。」
とやって来た。
館内着の俺を見て
「あれ?、(さっきの)着てないの?」
稲葉さんは、今度は FILA の上下で、
今では あまり見かけなくなった、小さなスカートが一緒の物だった。
紺系で、下は無地だが 上は小さなドット柄。
2人で、大広間に入った。
座敷のテーブルに着くとすぐに、
「いらっしゃいませ。飲み物から 伺ってよろしいですか?」
と、ウエイトレスさんが声をかけてきた。
俺
「稲葉さん、(飲んでも)いいすよ」
朱美
「そぉお、ありがとう。私は生中を、工藤さんは?」
俺
「俺は 生をグラスで」
朱美
「大丈夫?(車)」
俺
「取り敢えず 乾杯だけ。あとは ノンアルに代えて、お風呂で抜けば大丈夫でしょ。」
「(店員さんに)スミマセン それで」
店員
「生中とグラスビールですね」
「スミマセン ロッカーNOを‥」
朱美
「はい、これで」
と、ロッカーKEYを差しだした。
店員
「ありがとうございます、少々お待ち下さい」
大広間では、何処かの婦人会らしき人たちの、カラオケ大会の様を呈している。
そのステージが見える様にと2人並んで座った。
稲葉さんは俺の右隣。
朱美
「大丈夫?、一番後ろで見にくくない?」
俺
「大丈夫ですよ。ていうか 小さい時から背が高くて、何で並ぶんでも 一番後ろで、怖いんすよ うしろに誰か居られると、なので 許す限り いつも 一番後ろですかね。」
朱美
「へぇ、工藤さんでも 怖いものあるんだ?」
俺
「え?、俺 事務所じゃ、そんなに(悪い意味で)評判いいんですか?」
朱美
「そぉよぉ、言い出したら絶対曲げない、上司にだって平気で噛み付く、組織を何だと思ってんだ!、
だから あいつは出世 出来ないんだ!ってね(笑)」
俺
「そんな とこだと思ってました」
店員
「お待たせしましたぁ。生中とグラスビールです」
「他に何か ご注文は?」
俺
「単品のザル蕎麦とお刺身定食と天ぷらの盛り合わせを、稲葉さんは?」
朱美
「レディースセットと枝豆、枝豆は先に持って来て頂けます?。(ロッカーは)これで」
店員
「ザル蕎麦、お刺身定食、天ぷら盛り合わせ、レディースセット、枝豆。でよろしかったでしょうか?」
2人
「はい。」
店員
「ありがとうございます。枝豆は すぐに お持ち致します」
俺
「今は 何処でもそうだけど、あの 『よろしかったでしょうか?』は なんともねぇ。どぉにか なんないんすかね?」
朱美
「‥そうねぇ。」
俺
「まずは乾杯しますか?」
朱美
「そうしましょ。で?、何に乾杯するの?」
俺
「セクハラおやじ に!」
朱美
「はい(困惑)。乾杯!」
乾杯の最中に、店員さんが目配せをして、枝豆を置いていった。
枝豆をつまみ、ステージを見たまま 俺が
「そういえば、星野さんと大島課長の噂って、本当なんすか?」
朱美
「噂って?」
俺
「できてる って。」
朱美
「どぉなんだろ?、私も本当の事は知らないのよ」
「悦ちゃんは いつも あの調子で、何処までホントなんだか分かんない とこ あるし」
「まんざら、嘘 とも言えなそうだけどね。」
「これもね、ホントかどうか分かんないけど、悦ちゃんて どっちも イケるんだって。本人が言ってた」
俺
「どっちも って?。男も女も って事?」
朱美
「そう。」
俺
「稲葉さんにも お誘い あったりして?」
朱美
「何かね、それっぽいのは あったの。事務所の女性陣で飲んだ時に。ほっぺとか やたらとキスしてくるし、胸とか触ってくるし、私じゃなくて 若い娘にしなさいって あしらったんだけどね。」
「(事務服の)スカートだって 丈 自分で詰めてるんだよ。」
俺
「どぉりで。他の人より短いって思ってたんで」
朱美
「工藤さんは こんな言葉知ってるかなぁ。色キチガイ って、昔は言ったのよ、性にオープン過ぎたり、露出が過剰に多い人の事、聞いた事ない?」
「悦ちゃんには悪いけど、時々そんなふうに思ったりしちゃう時はあったなぁ」
俺
「で?、稲葉さんは?、星野さんとは何回くらい?」
朱美
「もお!、まだ ありません!」
俺
「いま、まだ!、って言った?」
「口説き落とされそうな自覚はあるんだ?(笑)」
朱美
「もおッ!」
俺
「稲葉さん オカワリは?」
朱美
「オバサン酔わす気?。オバサン酔わせて どおするの?」
俺
「(笑)昔 そんなコマーシャルがあったよね?」
「オバサン酔わせて 口説いてみようかな? って」
と、言いながら、店員さんに見える様に手をあげた。
店員
「はい。お待たせしましたぁ。」
俺
「生中のオカワリと、ノンアルコールのビールを」
店員
「ノンアルコールビールは、ビンと缶がございますが?」
俺
「じゃぁ、ビンで。」
店員
「以上でよろしいでしょうか?」
俺
「はい、お願いします」
今の店員さんと入れ替わりに
「お待たせしましたぁ。」
と、ご飯がとどいた。
俺が頼んだ物をテーブルの中央寄りによせて
「稲葉さんもどうぞ、食べたい物があったら」
朱美
「ありがとう」
俺は ザル蕎麦から すすった。
朱美
「美味しそうね、私にも頂戴。」
俺
「どぅぞ」
と 蕎麦ちょこを渡した。
稲葉さんは、何の躊躇もなく 蕎麦をすすった。
しばし どおでもいい会話をしながら 食事を進めた。
俺は また大きく 手をあげた。
店員
「お待たせしましたぁ。」
俺は ビンとジョッキを店員さんに渡して
「オカワリを‥」
店員
「生中とビンのノンアルコールビールですね、ありがとうございます」
朱美
「もぉ。ホントに酔っぱらっちゃうわよ!」
俺
「どぉぞ、酔っぱらって下さい。」
朱美
「もぉ。」
と、言いながら 俺の右膝に左手を乗せてきた。
稲葉さんは、俺の膝に乗せた手で 俺の足をさすりながら、右手だけで 飲んだり食べたりしている。
俺は 右手を稲葉さんの短いスカートの中に入れ、お尻を撫でている。
朱美(少し鼻にかかった声で)
「あぁ、酔っぱらっちゃった。どぉしよう」
俺
「えっ?、俺 稲葉さんがお酒強いの知ってますよ。
まだまだ大丈夫でしょ?」
朱美
「洗車が効いたのかも?」
俺
「どぉします?。少し休んで お風呂行って 帰ります?」
朱美
「(無言で頷く)」
本当に酔ってしまったのか 稲葉さんの右手が動かなくなった。
が、俺の足の上にある左手は 前後に 左右に ゆっくりと動いて、太ももの付け根で止まったり、を繰り返している。
俺はお尻から手を離し、背中をトントンと軽く叩いて
「どぉします?。かえりますか?」
朱美
「そぉね。ゴメンね。」
俺
「お風呂は?、どぉします?」
朱美
「少しは違うかな?」
俺
「と、思いますけど」
と、脇の下に手をまわし、抱きかかえて立ちあがった。
抱きかかえられてるのが 恥ずかしいのか
「大丈夫、大丈夫」
と、俺の手を払った。
バッグの取りかた、KEYの拾いかた はしっかりしていたし、決して 千鳥足などではない。
一瞬、『酔ったふり?』とうたがった。
ロビーに出て
俺
「じゃぁ、また30分後で いいですか?」
朱美
「うん。大丈夫。行っています。」
風呂からでると、寸刻 稲葉さんが買ってくれた
パンツを穿き Tシャツをきた。
家から履いてきた、靴下とジーパンを履き、パーカーを羽織った。
20分位だったハズだが、ロビーに戻ると、既に稲葉さんが、丸いソファーに座っていた。
俺
「お待たせ。お風呂は?」
朱美
「やめたの。変に酔いがまわっても嫌だし。シャワーだけにしたの。」
(俺のパーカーの前を広げて)
「うん!、似合ってる 似合ってる」
「じゃ、帰りましょ。カギ 頂戴。」
と、右手をだした。
俺からロッカーKEYを受け取ると フロントに行った。
KEYだけ置いて戻ってきて 俺に下足入れのカギを渡した。。
朱美
「(精算)済んでるから。帰ろ。」
「今日は 本当に ありがとう」
俺
「いえいえ、俺の方こそ ご馳走さまでした」
「じゃ、帰りますか?」
稲葉さんは、また先刻の様に、後部座席にバッグを置いて、助手席に座った。
車が走りだすと すぐに、今度は 稲葉さんのほうから 俺の手を両手で握ってきて、自分の太ももの上で トントン とはじめた。
俺が 稲葉さんの 下になってる方の手を握ると、
稲葉さんが 握り返してきた。
2人とも無言のまま『ミッキーだよ!』と、
ラジオの音だけが 社内に響いた。
やがて、車はホテルのゲートをくぐった。
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