忠告
ある朝、榊は、大きなアクビをしながら、バス亭に向かっていた。大阪淀屋橋の京奈銀行大阪支店まで、一時間半の通勤時間だった。
「榊さん、榊さん~」
庭ホウキをもった町内会長が、走りよってきた。
「おはようございます。会長、」
人目を避けるように、会長は、榊を公園の木陰に誘う。
「奥さんのご様子は、どうや?」
「別に、かわりなしですよ。なにか?」
「仕事も大事やが、奥さんも、大事やぞ。実はな、うちのばあさんが、町内で、よからぬ噂話しを聞いたそうだ。」
「どんな?」
「毎朝、9時すぎには、出掛けていて、その格好は、ホステスのような服でな。そして、町内の商店街の男達の間で、奥さんにそっくりの女のエロビデオが、回覧されていると言う噂もある。」
榊は、目の前が、真っ暗になり、会長にお礼をのべ、まるで、夢遊病者のように、バスに乗り込んだ。
(毎朝、出掛けている。家内に似た女のエロビデオ。どうなっているんだ。慰安旅行の混浴風呂の女は、やはり妻では…)
四条大宮から阪急電車に乗るのを止めて、駅近くの喫茶店で、へたりこんでいた。
今日も出掛けるのかな。榊は、自分の目で、確かめようと、戻ることにした。
自宅近くの公園に戻り、ベンチに座り通りを監視する。時間は、9時すぎ。9時半になり、諦めかけた時、妻のマキが、現れた。
胸の前が、大きくカットされたTシャツで、乳房の半分は、こぼれ落ちそうに、露出し、薄手のミニのタイトスカートをよく見ると、ショーツのラインが、浮き上がっている。
まるで、痴漢に触ってと、アピールするような格好だった。うつむき加減に、最後に、マキの乗ったバス乗り込む榊。
マキが、降りたのは、四条川原町。先斗町を迷うことなく、路地から路地を抜け、夜の歓楽街が、嘘のように静まりかえる木屋町に出た。そして、妻は、岩田興産ビルの中に消えていった。
(岩田興産…あの岩田のやっている不動産屋…今時、ピンサロが、やっている。)
「どうですか?早朝割り引きしてますよ。この時間だけの、激安タイム」
若い男から、声をかけられた榊は、慌てて、その場を立ち去った。
大阪に行った榊は、銀行で、いつも取引のある興信所に向かった。
妻の素行調査を依頼した。一週間の調査で、30万円、サラリーマンとしては、大きな金額だが、榊は、迷わず依頼した。
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