本堂までの長い参道を歩いていると、沙紀が腕に手を回してきた。
「夫婦に見えるかな~?やっぱり親子かな~(笑)」
「20歳の差は埋めきれないよ(笑)周りから見たらやっぱ不倫カップルかもね。でも、沙紀と腕を組んで歩けるのは嬉しい限りだよ。」
「私も嬉しいですよ~昼間堂々とデートしてるんだから。今は二人きりだもの。」
三門を過ぎて本堂に着くと僧侶がお勤めの最中で、読経が流れる中ふたりで本尊に向かって厳かな気持ちで拝礼した。
これからも私の横にいる沙紀と淫らな関係が続くように、沙紀を自分好みの女に変えられるように…本当は全然厳かじゃなかった。
おみくじを引くと吉だった。沙紀は中吉。
「大吉や凶じゃなくて良かった~。浮かれたり落ち込んだりするのあまり好きじゃないから。今二人でいられる時間も浮かれずに大切にしたい。貴重な時間だもんね。」自分に言い聞かせるように沙紀がつぶやいた。
「お土産やお守りは言い訳ができないから買わないけど、二人の時間を思い出として持ち帰ります。」
そんな風に言われてその場で抱きしめたくなったけれど、周りに観光客がいたので諦めた。
早めのランチにこの辺りでは名の通ったすき焼き店に入った。和牛の霜降りロース肉のすき焼きは値段も張ったが、とてもおいしくて口の中でとろけてしまう柔らかさだった。
「こんな牛肉毎日食べてたら体壊すよな。でもおいしいや。こんなの食べてると酒飲みたくなっちゃうなぁ~」
「支店長は接待でよく来てるんじゃないですか?」
「そんなことないよ、年齢が高い人たちばっかりだから、寿司屋が多いかなぁ。あと昼食は蕎麦ばっかし。話は変わるけど健太郎君はサッカー頑張ってるかい?」
「まぁ頑張ってはいるんですけど、なぜかゴールキーパーに指名されて、本人は走り回っていたかったみたいで複雑なようです。」
「団体競技だから好き嫌いでポジションは決まるものではないし、指導者が最もいい選手をそこに据えるわけだから、ゴールキーパーとしてのセンスがあるんじゃないの。」
「そうですかね~私にはちっともわかりませんよ~(笑)」
「保護者会の役員はどうよ?」
「忙しいですけど一人でやってるわけじゃないから、淡々とこなしてますよ。ちょっと弱っているのが、お父さんの中に何かにつけ私と一緒に居たがる人が一人いて、練習の付添が当番制なんですけど、裏で手を回しているのか私の日程といつも一緒なんですよ。
練習の邪魔にならないようグランドの端の方で見守っているんですけど、いつも隣に来てなれなれしく話しかけてくるんです。旦那のこととか生活のこととか、全然関係ないこと聞いてくるから無視してるんですけどね、子供どうしは仲いいから無碍にするのもちょっと気が引けたりして。」
「下ネタを振ってこないうちは未だしも、触れたりしてきたら要注意だね。日程調整している役員に話して替えてもらうとか、ダメなら保護者会長とか指導者に言ってみればどうよ。」
「そうですね、とりあえず他の役員に相談してみます。変な話をしてごめんなさい。」
そんな話をしながら食事の時間は過ぎた。
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