この春、沙紀の長男の健太郎君が小学校6年生になり、サッカークラブでも最上級生ともなると保護者会の役員のお鉢が回ってきて、沙紀も夕方や休日の練習の付添をすることが増えてきたようだ。5月に入ると大会も始まるらしく、保護者の応援の取りまとめや、食事や飲み物の調達までしなければならないようなことをぼやいていたが、比例してめっきりLINEの連絡も減ってきた。
本社に電話する機会は多いが、交換が手いっぱいになると総務部に回っていくため、まれに沙紀が電話に出ることがある。
「な~に気取った声で出てんだよ(笑)」
「あ、支店長。あたりまえじゃないですか、お客様からのお電話を受けてるんですから(笑)」
「かわいい声してるね~。その声と清楚っぽく見える容姿に騙されて、誰か言い寄ってこないの~?」
「ぽくじゃなくて清楚で真面目ですよ。」
「真面目な女が『大好きなこのちんぽ私のまんこに入れて~』なんて絶叫しないぞ~(笑)」
「仕事中にそんなこと口にしていいんですか!」
「大丈夫、支店長は島流しにあったような個室のうえに、今ドアを閉めているから重要な話をしていると思って、誰も来ないようになってるしね。」
「でも私はそんなこと喋れませんからね。で、今日はどちらへお回ししますか?」
「営業統括部長に回してもらえますか?沙紀にはまた連絡するからね。」
「わかりました。お回ししますので、少々お待ちください。」
しかし、お互い連絡することもなく夏も終わり近くになってしまった。
新幹線改札から白い帽子をかぶりサングラスをかけた沙紀が、改札正面の壁にもたれて待っている私を見つけるのはすぐだった。サングラスで目元は見えなくても嬉しそうに笑う沙紀がまっすぐ私に向かってきた。
「よかった~、すぐにわかって。」
「都会の駅とは違うから大丈夫だって、言ったとおりだろ。」
「でも心配だったんだもの。」
「よく来たね~嬉しいよ。」
「会いたかったんだもん!」
駅前のパーキングに停めた車に向かい、沙紀を乗せて車を発進させた。
「どこに行くんですか?」
「ラブホ!と言いたいところだけど、帰るまで時間があるから観光と食事してからと思ってさ。それともすぐに抱いてほしい?」
「観光してHして食事!(笑)」
「はいはい(笑)」
車で10分ほどの距離にあるお寺に向かった。
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