私達の年代ともなれば、既に孫がいて当然の環境の筈、まさか間違いなど起こる訳が無いだろう。
そんな気持ちとは裏腹に心のどこかでは邪な期待を抱いていた私。
十日後、裕美を案内した所は落ち着いて話が出来る、料理屋の座敷だった。
高校時代の思い出や、同級生の近況など話は留まる事なく、いつしか私達は三〇年以上のブランクを埋め、高校生の頃の二人に立ち返っていた。
裕美が持ってきた懐かしい昔の写真を並んで見ているうちに、私達の肩は自然に触れあうようになっている。
裕美の肩を抱き寄せ、顔を近付けていく。
瞼を閉じて裕美は身体を震わせていた。
唇を重ねていくと、縋りつくように、身体を預けてくる。
恥ずかしさを押し殺しているような、裕美の仕草に初々しさを覚える。
何も知らなかった若い頃に、戻ってしまったかのような雰囲気が漂っていた。
しかし時の流れは純真だった少女にも様々な試練を与え少女はいつしか大人の女になっていた。
重ねた唇に差し入れた私の舌を、裕美の舌が押し返しながらヌメヌメと動いて絡みつく。
唇を離して寄せあった頬が熱く火照っていて裕美の秘めた感情を私に伝えてきた。
「迷ったの」
「え…」
「今日来ようか来まいか、すごく迷ったの
今日だけじゃないわ、電車の中で…
あなたを見つけた時も、声を掛けようか
やめておこうか、すごく迷っていたわ
でも、もう二度と後悔したくない
そう思って、勇気を出して…」
私の胸で嗚咽を洩らす裕美を、優しく抱いて頭を撫でながら…
「場所を換えようか?」
裕美は首を左右に振った。
「どうして?」
「こんなお婆ちゃんになったから恥ずかしい」
「それを言うなら私だって…」
「…………」
「いいね?」
「ハ……イ……」
当時は文化祭のフォークダンスで、手を握ることさえ畏れ多かったのに、そのマドンナが今は私の腕の中に……
しかも…
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