その夜のことがあってから、里香ちゃんは僕との間に距離を置くようになりました。
うぶでシャイな少年だとばかり思っていた僕にも強い性欲があるのを知り、しかもそれが自分に向けられ、しがみついて腰を擦りつけられ、乳房をもまれ、このままこの少年をからかい続けてはまずいことになると思ったのでしょう。多分、彼氏もいたんだと思います。あれだけかわいらしい人ですから、当然です。
僕が実際に初体験を済ませるのには、それから2年かかりました。
性欲だけは人並みにあっても、人見知りで内向的な僕はなかなか彼女ができず、ようやく友人の紹介で、看護師をしていた同い年の女の子と付き合い始めたのは、大学3年目の時。
里香ちゃんはもう大学を卒業していました。
僕はとても幸運でした。
看護師の千尋はとてもやさしい、母性にあふれる女性でした。
彼女は準看の資格を持って日中は病院で働き、夕方は看護学校に通って正看の免許をとるための勉強もしていました。病院の給料で学費と生活費を自らまかなう、言わば苦学生でした。
風呂なしの古い木造の、彼女のアパートで、僕は童貞を卒業しました。
初めて女性の前で素っ裸になって布団に入った僕は、緊張でぜんぜん勃たず、ふにゃふにゃのペニスをなんとか千尋の膣に押し込もうとするのですが、そもそも股間を広げて「下見」する度胸もなかったので、目でちゃんと見たことのないモノ、位置さえもハッキリとは把握していないモノに向かって、やみくもに下半身を押しつけていたことになります。
千尋はそんな僕を一切バカにしたり、失望したような素振りは見せず、「そのうちできるようになるわ」「一緒に練習してふたりで上手になりましょう」とやさしく言ってくれました。そして、「あたし、こうしてるだけで幸せ」と言って、全身の肌と肌を密着させ、僕を抱きしめてくれるのでした。
結局、ようやく緊張が解けてきちんと勃起し、千尋の中に挿入することができた時には、誕生日を過ぎて僕は21才になっていました。
この時には既に僕の人生から、里香ちゃんは完全に姿を消していました。
僕は初めて覚えた女性の肉体とそれが与えてくれる快楽に溺れ、千尋とふたりで色々なことを試し、学んでいったのです。
それから、長い年月が流れました。
千尋とはとっくに別れ、学業も終え、やがて僕は仕事で東京に引っ越しました。
こんな僕ですが、何人かの女性と付き合いました。
運動神経が悪く、ガリガリにやせ、童顔で、人見知りが激しく内向的な自分は、女性にはモテない、ずっとそう思って生きていました。
不思議なものです。今、若い頃の自分の写真を見てみると、確かに堂々とした「男の中の男」とは程遠いけど、地味でおとなしそうな顔立ちとは言え、外見だけで即「女性に見向きもされない」と決めつけられるようなブサイクな青年ではなかったようです。
なによりも自分に自信がなく、女性に積極的になれず、すぐにあきらめて身を引いてしまう、そんな卑屈な性格が、自分を女性から遠ざけていたのでしょう。
現に、数が多いとは言えないまでも、幸運に恵まれて出会いがあった時には、何人かの女性が喜んで身を預けてきたのですから。
しかしどの女性とも長続きはせず、僕は一人悶々として、枯れることのない性欲を自分の手で処理している、そんな日々が多かったのです。
突然、里香ちゃんが僕の人生に戻って来たのも、そんな時期でした。
僕は36才になっていました。
大学の先輩で唯一交流の続いているTさんから、ある日メールが届きました。
「里香ちゃんに、おまえのメールアドレスを教えてもいいか?」
地元の同窓会で久しぶりに顔を合わせた時に、里香ちゃんの方から「山岡くん今どうしてるのかな。誰か知ってる?」と話題にしたそうです。
20代のうちに結婚して、今は2児の母親。ちょっとふっくらしたけど、相変わらず快活でかわいらしかったと、T先輩は言います。
里香ちゃん...
19才の夏、サークル仲間たちが寝息を立てる部屋の布団の中で、里香ちゃんのおおきくふくらんだ乳首をさわったこと。月に照らされた庭先で、里香ちゃんの指でペニスをしごかれ、射精させられたこと。そして... トイレのドアごしに、オナニーをする里香ちゃんの喘ぎ声とぴちゃぴちゃという音を聞きながら、薄いドアの板一枚をはさんだすぐ隣で自分も自慰をして、下着を汚してしまったこと...。
それら思春期の思い出が、生々しくよみがえりました。
この時、下心はありませんでした。
相手は子持ちの人妻だし、地元と東京を隔てる遠い距離。ただただなつかしく、どうしているのか気になっただけだったのです。
「いつもメールありがと。」
38才のお母さんになっていた里香ちゃんの声は、あの頃のままでした。
メールをきっかけに近況を報告し合うようになり、彼女は時折電話をくれるようになっていました。
「今、大丈夫なの?」
「うん。相変わらずダンナは出張が多くてね。子供はぐっすり寝てるよ。」
電話をくれるのはいつも、夜中でした。
「山岡くんは?」
「うん、職場は近いから家出るの8時半だし。ぜんぜん大丈夫。」
「まだ結婚しないのね。彼女はいるの?」
「いないよ。」
「どのくらい?」
「うーん... 3年ぐらいになるかな。」
「3年も?」
「うん。しかたないよ。相変わらずモテないし。」
「うふふ、そんなことないでしょ。」
メールのやりとりを頻繁にし、電話も3回目で、打ち解けてきていた時でした。思い切って、聞いてみました。
「ねぇ、○○さんのアパートに泊まった時のこと、覚えてる?」
「...。」
まずかったかな。
「...ふふ。...そうね、覚えてるわよ、もちろん。」
ふたたび沈黙。
「山岡くん、イタズラっ子だったわよね。お仕置きしてあげればよかった。」
冗談めいた口調に、少し安心しました。
「...ごめんね。あの時、夢中で... 里香ちゃんいつもやさしくしてくれてたから...。」
「わかってる。」
「あれって、今なら、犯罪って言われても仕方ないよね。」
「性的暴行? ふふふ、まぁね。でもあたしは訴えたりしないわよ。なんてゆうか、...暗黙の合意があった、ってことで。」
「あそこまでは、でしょ。」
「そうね。ギリ、あそこまでは。」
ふたりの間にあった薄い氷が、解けたような気がしました。
「それで、彼女なしで、都会で一人暮らしかぁ。大変ね。さびしいでしょ。」
「うん。さびしいよ。夜は特にね。」
二人とももうすっかり大人だし、あの話しをしたせいか、少し踏み込んでもいいような空気になっていたんだと思います。里香ちゃんが電話の向こうで、声をひそめて続けました。
「山岡くん、意外と... 強いもんね、欲求...。」
「...え? ...そうだね。...うん。」
「...寂しいわよね、男盛りが、毎晩一人じゃ。」
「...うん。」
「...ねぇ、せ...性欲... 強い方なの?」
里香ちゃんの声が、かすれました。
「え? ...うーん... そうだね、きっと、強い方かな...」
「彼女がいた時は、たくさんしたの?」
「...えーっと... 他の人がどのくらいするのかわかんないけど...」
でも、それまでの彼女みんなに、性欲が旺盛だって言われていました。
「前にね、専門学校生と付き合ってたことがあったの。」
「いくつの時?」
「僕は28か29かな。」
「やるじゃない。それで?」
「だいたいいつも僕のアパートに一緒にいて。たまたまその時僕の職場が近所で、歩いて15分ぐらいだったんだ。彼女が夏休みとかで、日中ヒマで家にいるじゃない。そしたらね、どうしても昼休みに会いたくなって、自転車飛ばして帰ってた。」
「それで、昼休みに、エッチしちゃうの?」
「...うん。あのね、まず朝に、少し早く起きて、せがんで彼女を起して、しちゃうんだ。」
「まぁ。朝から?」
「彼女が学校休みの時は、僕は社食のランチをキャンセルして、自転車で爆走してはアパートに戻るの。彼女は昼ご飯をすぐ食べれるように用意してくれてて、二人でさっさと食べて、セックスするの。そして、また自転車で職場まで爆走。昼休憩が45分しかなかったから、ギリギリだったなぁ。」
「やりたい一心で、自転車こぎまくるわけね。」
「そう。それでね、家に帰ったら、食事もせずにまず彼女を押し倒して...。」
「あらまぁ。」
「晩ご飯の後で風呂に一緒に入ったらまた興奮してきて。夜も、テレビ消してさあ寝るかとなったら、またしたくなったり。」
「絶倫じゃない。」
「そうかも。」
「...じゃぁ... つらいわね。」
「...うん。」
「...今も?」
「...うん。」
受話器の向こうで、布が触れ合う音がして、里香ちゃんの押し殺した声が、一段と耳元に近づきました。
「...ねぇ... 今も... ...なってるの?」
「...なぁに?」
「...今も、お... 大きくなってる...?」
「...うん...。」
今度は自分の声もかすれました。
パンツの中央のふくらみは、内側から染みてきた液で黒くなり、ぬるぬる、てかてかと光っていました。
「...さわってるの? 自分で...」
「...うん。...里香ちゃんと話す時は、いつもさわってるよ...。」
熱い、乾いたため息が、受話器のスピーカーからもれました。
里香ちゃんの鼻息が、時折送話口に熱風を吹き込み、耳元で大きな音をたてます。
「...あぁ...」
押し殺した、熱いささやき声。
「...あぁ、...して、あげるのに...」
「...なぁに、里香ちゃん...?」
「...してあげる... もし一緒にいたら、してあげるのに...」
「...なにを...?」
「...口で... 口で、いっぱいしてあげるのに...」
「僕も、してあげたい... 里香ちゃんに、口で... 一緒に...。」
大きく喘ぐ声が耳元で聞こえました。「...そんな... そんなことされたら、感じ過ぎて、できなくなっちゃうよ...」
「...ね、どこでもドアがあったら、いいね。」
「...うん。」
「...10センチぐらいの小さいやつでもいいから誰か発明してくれたら...」
「...10センチ? ...どうするの...?」
「...おちんちんだけそっちへ出して、してほしい...」
「...あぁ... はぁ、...はぁ...」
里香ちゃんは、もう露骨に喘いでいました。
彼女もずっと... 自分自身を、さわっていたのです。
「...ね、里香ちゃん... 今、どんな格好...?」
「...はぁ... パジャマ...」
「...脱いで欲しいな。...パンティーも、全部...」
「...はぁ、...はぁ、...うん... わかった...」
耳元で、受話器を布団か枕か、なにかやわらかい布がこすります。
「...はぁ... 脱いだよ...」
「...もう、裸...?」
「...うん...」
「...じゃぁ、四つん這いになって... 膝を立てて、お尻を持ち上げて...」
受話器を持ちかえて、体勢を変える間、またごそごそと音が。
シーツの上に置いた受話器に顔を押し付けたようで、突然里香ちゃんの声が大きくなりました。
「...四つん這いに、なったよ... ねぇ、山岡くん... 大きくなってる? おちんちん... おおきく、なってる?」
「...うん...。とっても、かたくなってる...」
「どうしたいの...? 山岡くん、もし一緒にいたら、どうしたいの...?」
「...里香ちゃんのお尻をぎゅっとつかんで...」
大きく息を飲む声。
「後ろからこれ、入れたいの。里香ちゃんのあそこに...」
「...はぁっっ...」
「...それでね、激しく、いっぱい、突きまくりたい... 」
「...ああん! ...はぁ、...はぁ、」
「...里香ちゃんのお尻に指が食い込んで赤くなるぐらい、つよくつかんで、ぱん!ぱん!って大きな音をたてて... 里香ちゃんのお尻が真っ赤になるぐらい、激しく...」
「...はぁっ ...ああっ ...ああっ あっ、あっ、あっ、あっ...!」
「...あぁ、したい... 里香ちゃんと... うしろから... 激しく...」
「...あぁ、はぁ、して...ほしい... あぁっ...」
僕は普段は、ティッシュを広げたその上に上手に射精するのですが、この時は...
里香ちゃんの喘ぎ声が一段と速く、激しくなり、「ああ、いい、もっと、ああ、いいの...」と熱い声でささやくのを聞きながら...
仰向けに寝て天井を見ながら、液にまみれてぬるぬるのペニスをしごきつづけるうちに、その先端から、ついに大量の真っ白な精液が...
どぴゅっ!と、吐き出されました。
そして、後に続いて、どくどくとあふれだし、幹を伝って流れ、陰毛が茂る下腹部を濡らしました。
少し遅れて、電話の向こうの里香ちゃんも、「あぅーん」という呻き声を最後に息を止め、しばらくの静寂。
そして、電話ごしに遠い距離を挟んで、一緒に肩で息をする、ふたり。
「...はぁ... ...はぁ... や... 山岡くん...?」
「...なぁに...?」
「...すっごく、よかった...。...あたし、電話でしていっちゃったの、初めて...。」
「...僕も...」
言われてみれば、自分もそうでした。女の子と電話中に盛り上がってきて、それぞれさわることはあっても、射精するまでに至ったことは、それまではなかったのです。
「ね、会いたいね... 今度こっちに帰ってくる時...」
「...そうだね...」
(無名)さん、コメントありがとうございます。<(_ _)>
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