「いらっしゃいませ、嶋崎様…」
新車のナンバーの数字選択を決め、営業所を訪れた私に友美がコーヒーを出してくれた。
先日の出来事はおくびにも出さず淡々とした態度で接していたが、私と視線が絡んだ瞬間頬を染めて眼を伏せた。
恥じらう友美の仕草が、妙に初々しく写り、男心を擽られた。
新車のナンバーは、色々考えた末に1103番にすることにした。
これは友美の名前に引っ掛けた語呂合わせで導き出した数字だが、勿論まだ友美にもそれ以外の誰にも、何も説明していなかった。
納車予定日が決まったので、こっそり友美にメールを送った。
(新車がきたら、真っ先に友美とドライブしたいな…
空いている日を連絡してね。勿論それ以前でも暇が
有ったらいつでも連絡を待っているからね)
最後にハートを付け加えた。
スマホに眼を落としていた友美が、頭を挙げ私に微笑みを送ってくれた。
返ってきたメールには…
「嬉しい♪改めて連絡します」
コーヒーを飲み干し営業所の全員の見送りを受け、私はその足で宝石店に向かった。
友美の白い肌を想い浮かべて、彼女の胸元に似合いそうな、深紅のルビーのネックレスを選らんだ。
数日後に給油に立ち寄ったG.Sで、偶然友美と出会い、二台連ねて近くのファミレスへ。
「お父さん、十一月生まれなの?」
「違うよ、何で?」
「だって…ナンバー…
誕生日にする人結構多いのよ」
言おうか言うまいか迷ったが、友美だけには知って欲しいと思う自分がいた…。
「百×10で、とも。3が、み。
1003だと、も、が無くなっちゃうから1103」
明晰な友美は瞬時に理解していた。
「え~っ?友美なんかで良いの?」
「私がそうしたかったから…」
「嬉しいっ…そんな風にして貰ったことなんて
一度も無かったから、すごい感激っ!」
「その代わり…
もし勘当されたら、すぐに廃車にしてやる」
周りを憚ることなく二人で吹き出していた。
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