「嶋崎さん、最近よく若いお嬢さんとご一緒なんですって?」
朝、立ち寄ったいつもの喫茶店のママさん。
「見間違いだろ?私の事じゃないよ」
「俺も見たぞーっ!」
奥の席から声が掛かった。
いつも顔を会わせる私と同年輩の花屋の親父だった。
隣の席に腰を下ろす。
「コーヒー飲んだら早く帰れよ
奥さんが探していたぞ」
「あいつは俺がいない方が喜んでるよ」
軽口を叩きあっているところへ、コーヒーを運んで来たママさん。
「でも嶋崎さんって本当に若々しいわねぇ」
「私なんてバカだから若く見えるだけだよ
精神年令なんて三〇歳位なんだからさ」
「そんな事ないわ、いつもお洒落だし
若い人とお付き合いされてるから余計にね」
あまりにも持ち上げられて私は気恥ずかしくなってしまった。
「本当はママのように、大人の魅力が溢れた色っぽい女性がタイプなんだけどなぁ」
「お上手ねぇ、誰にでもそう言うんでしょ」
「そんな事は無い、ママの豊満な胸とお尻に惹かれて通って来るんだぜ」
顔を真っ赤にしたママは、お盆で尻を隠して歩いて行ってしまった。
喫茶店に訪れる人が自然に友人になり、毎朝くだらない話で盛り上がるのが日課のようになっていた。
丁度コーヒーを飲み終えた頃メールの着信が有り、差出人を確認すると美沙緒だった。
(今日、お暇有りませんか?)
すぐに返信。
(どちらにお迎えにあがりましょうか?
すぐにでもお伺いします)
(十一時にコンビニの前で…)
時刻を確認して二杯目のコーヒーを注文した。
美沙緒をピックアップして私は、高速道路のゲートを潜って尋ねた。
「右か左か?」
「左っ!」
その後もJ.C.や分岐点の度に美沙緒に選択の権利を与え、私達は福井県内を走っていた。
女形谷S.Aで軽く食事をした時、美沙緒にもう一つの選択を求めた。
「このまま温泉に行ってお泊まりしない?」
「良いの?」
瞳を輝かせて真っ直ぐ私を見詰める美沙緒の胸元には緑色の石が揺れていた。
私の腕に縋りつき車まで歩く途中で美沙緒がそっと囁いた。
「言い出せなかったの…」
「ん?」
「お泊まりしたいって…」
胸が熱くなり、腕に当たる豊かな胸の感触は私の股間を熱くしていた。
以前何度か利用したことがある庭が売り物の有名旅館に連絡を入れて予約を取り付けた。
突然決めたお泊まりの為何一つとして準備をしていない私達は大型SCを探して着替えや美沙緒の化粧品を調達した。
夕刻旅館に到着して、出迎えてくれた係りのお姐さんと顔を合わせた私は、顔を隠したい思いに駈られていた。
なんと半年程前、女性を伴って投宿した折に付いてくれた係りの女性だった。
彼女も私の顔をじっと見詰めている。
全ての感情を押し殺していたつもりだったが彼女がお茶を出して引き下がった後、ふっと溜め息が洩れた。
美沙緒は既に私の異変に気付いていた。
「どうしたの?」
隠す必要も無いので、事情を話すと爆笑して転げ回った。
「若くて美人の美沙緒だからこのスケベ親父って思われたんだろうな?」
返事代わりに甘いキスをくれた美沙緒…。
「美沙緒はお父さんって呼んでくれないね」
少し間を開けて美沙緒は…
「友美がずっとお父さんって呼んでるから…
考えてたの……友美から取り上げちゃうような気がして
……だから私はパパって呼ぶわ」
「パパか……それも良いね」
「うん、私のパパ……」
そう言うと改めて首に抱きついてきた……
「この旅館にはそんなに広くないけど貸切り家族風呂が有るんだよ、後で入ろうね」
「うん、背中流してあげるねパパ……」
そして私達は友美にメールを送った。
同じ文面で同時に送信……
(温泉に来ちゃったよ~ん)
すぐに返信が……
(あ~ん、私も行きたかったぁ)
(平日だから友美はお仕事だろ?)
(夜中に電話して邪魔してやるぅ~)
今夜は携帯の電源をOFFにするかな?
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